序章
Half of First

 四季の緩やかなこの国でも、吹く風の温度が昨日と異なると思った。少しのちに振り返るなら、この日が季節の境であったと印を付けるかも知れない。騎士団長に呼び出しを受けたのは、そういう日だった。
「すこし特別の任がある」
 何となく歯切れの悪さを感じる様相で、団長が語る。――下された命は、末の姫の付き人になるように、という旨のものだった。
 キュクロス王室の、末の姫。王城に出入りしている者ならば、“あの姫”か、と思い至る話が多くある。同時に疑問も一つ湧き上がった。なぜ自分に。王城内の人事がどう動こうと一介の騎士が異を唱えるようなことではないが、当事者として気に掛かるのもまた道理だろう。
 そのまま問うても、騎士団長は首を振った。
「上からの特命だ。これ以上は知れない」
 騎士団長が秘しているのか、騎士団長にも伏せられているのか、仔細はともかくも、現状で自分が知り得るべきことでない話だとは理解した。

 末の姫との顔合わせは、それから数日後。彼女直属の使用人らが手配したサロンの一角だった。名を交わし、視線と言葉を交わし、姫を取り囲むこの一員に自分も入ることをそれぞれで了解してゆく。対話自体は恙無く済んだ――だろう。
 職務内容が城や町の警護から姫個人のそれに移ろったというわけだ。後は姫の呼び出しがあればどこへでも参じて付き添う身である。果たして暇になるか忙しなくなるかも全てはこの姫次第だなと思い、明けての翌日。何はなくともあっても、まずは姫の人柄を把握し、また姫からの信頼も得ねばならない。呼び出されるまでもなく、騎士は姫の姿を探して足を運んだ。

 一人の騎士が姫に声を掛ける。
「本日はごきげんいかがですか、姫」
 半分の姫は、昨日と同じ色の瞳で騎士を見た。


  • 騎士が最初に出会った“末の姫”は、NPCである姉でした。序章はその後日、騎士にとっては二度目、PCである妹の姫にとっては初めてとなる対話の一幕です。
  • 話を聞いてから初顔合わせまで、及び、初顔合わせから二回目までの経過日数はお好きに設定して構いません。季節は春~初秋ごろで、スレ立て時に指定するか、指定がなければ遣り取りの中で擦り合わせてください。
  • 場所は王城内で自由、時間は午前中が無難です。互いに互いを見つけた後、適宜移動しても構いません。
  • 騎士が姫の付き人となることは、騎士にとっても姫にとっても突然の話で、どちらも詳しい事情などは知らされていません。追究した場合、ずっと上からの指示だ、とだけわかります。
  • 騎士に特命を伝えた相手は「騎士PCより上の立場の誰か」であれば別の人物としても構いません。動きやすいように、お好きにしてください。
  • 先に姉のほうが騎士に会ったのは、姫側の意向としていただいても、偶然でも、また当人らの与り知れぬところで勝手にそう手配されていたでも何でも構いません。
  • 序章において、姫は自身が双子である旨を決して明かさないでください。騎士側がどのような印象を持つかは自由です。