かつて、一人の騎士は双ツ首の竜を打ち倒した。高き峰々に囲われたこの地を乱していた竜だという。調和を掻き乱し、円環を罅割れさせる、一つの肉体にあったふたつの魂。――例えばその首ひとつを削ぎ落としたとしたら、もう片方は生き永らえることが叶うのか。
建国神話はもしもを語らない。かつての竜は双ツ首を落とし、大地は人のものになった。
キュクロスの姫は昔語りの本を閉じた。厚手の紙が空気を食むまろやかな音が、今は妙に冷めて聞こえる。
王室の末の娘、つまりは“わたし”の婚約が決まった。嫁ぎ先で、わたしは“一人”であるという。半分ではない。一人の体、一人の名、一人の記憶。この十七年間、鏡映しのように、背中合わせのように傍に居た妹はこれからどこで過ごすのか。
しんと冷え込む今宵、妹がどこへ出かけて行ったのかは知らない。だが誰が共に居るのかは知っている。硝子の向こうに半円の月を仰いで、姫はかすかに唇を震わせた。
夜を経て、ひとりきりになるのは果たして誰なのか。来たる明日に“もしも”など無い。
- 終章は物語のエンディングです。禁止事項はありません。
- 四章の翌日以降~年の瀬の期間の出来事とします。騎士から任意の場所に呼び出すか、国王よりそれぞれ尖塔に集められたとしてください。時間経過や移動もお好きなようにどうぞ。
- 尖塔の内装や施設は自由です。出入りできる人物は少ないはずなので動植物の存在が豊かである等は難しいかも知れませんが、魔法で手入れされている設定としたり、無生物の設置などは何でもどうぞ。
- 極端に言えば国の行く末を含めて、何でもお好きにしていただいて構いません。ここまで物語を重ねた各ペアらしいエンディングとしてください。