四章
Half of Affection

 話がある、と告げたのは王の側近であった。誰が何の為に、という一切が端折られたことで逆に察することとなる。伝えられたのは場所と日時、それから魔方陣を一枚渡された。指定通りに赴いたのは王城の端にある尖塔だ。入り口は存在しないと謂われていた建物に、魔方陣が反応して隠し扉が開く。――結界を潜った先の一室にはキュクロスの王の姿があった。
 王城に静寂の下りる夜半、王は騎士を労った。いくつか言葉を賜った後に、その瞬間は訪れる。
「――おまえは我が娘の秘密を知り得ていようか」
 王は騎士でないどこかを見ている。その眼差しは、十七年前の日を追っているのかも知れなかった。
「あれは双子だ。キュクロスにあってはならない、双ツ子だった。事実を隠し、今日まであれらに、二人で一人となるよう命じてきた。しかしそれも潮時だろう――忠実なる真円の騎士よ、おまえには、年内に事を正してもらいたい。おまえが知ったのは我が王室の最大の秘密だ。この信頼に応えておくれ」
 そうして王は確かに命じた。

 “半分の姫”、その片方を処分せよ。

 キュクロスの末の姫、密やかに二人存在するその妹のほうへ寄越された父からの手紙は、簡単に纏めると「姉の輿入れに向けて身辺整理をしておくように」というものだった。何せこの身は間も無く結婚し、他国へ嫁ぐことになる。まさか双子揃って輿入れするわけにもゆかないし――片方は嫁ぎ、片方はそうではない。なれば残る側がこのまま永劫に存在を秘されることは自明のことだった。
 外からの視線を万が一にも避けるため、窓から離れた部屋の隅で手紙を眺めている。ぺらりと捲った最後に魔方陣が記されていた。この標でしか開かない尖塔があるとは、どこかで聞いた覚えがある。それがこの身の終の住まいであろうか。
 こぼれる溜め息を拾う者は居ない。


  • 四章は、各自顔を合わせていない間の一幕です。両者、国王の使いより魔方陣を記した何かしらのアイテムを受け取り、それを持つ者のみが立ち入れる尖塔の情報を得ていてください。
  • 三章同日の夜~数日程度の期間での出来事とします。それぞれ場所や時間、NPCの扱いなどはお好きにしてください。
  • 国王と騎士の密談内容は詳細自由です。末の姫が実は双子であることと、年内にどちらかを殺害処分してほしいこと、また騎士に対して秘密共有の信頼を寄せている旨が必ず含まれます。国王の印象はお好きにどうぞ。父親らしい葛藤を抱えていると見ていただいても、国政のため割り切った冷徹さのみを感じていただいても構いません。騎士の今後に関しても、真実信頼を預けて腹心にするつもりなのか、あるいは別途秘密裏に処分するつもりであるのか、ご自由に設定してください。
  • 騎士は四章のうちに国王への攻撃手段を持ちません。仮に何かしらを試みても、魔法障壁に阻まれるものとしてください。
  • 姫は今回の婚約がやはり姉のものであり、双子が別たれることになる確信を得られます。それ以上のことは未だわかりませんが、推察は自由です。
  • 四章中はペアさんに接触するシーンは含めないでください。終章はこの翌日以降となり、具体的な経過日数はスレ立て側の騎士が指定するか、遣り取り中に擦り合わせていただくことになります。