終幕の半分


ペア制のキャラレスは初の参加となりまして、こうしたご挨拶をするのも初めての経験となります。文章を書くのが下手っぴで、想いをお届けできるのはほんの一部となってしまいそうなのですが、私なりに愛を込めて綴らせていただきます。
まずは瀬見様、本日までサイトの管理・運営のほどお疲れさまでした。日誌やご連絡の際、瀬見様の細やかなお気遣いやご配慮に、始終安心して活動をさせていただいておりました。「half of breath」の世界にお招きいただき、本当に嬉しかったです。温かく見守ってくださり誠にありがとうございました。
参加者の皆様方におかれましてもお疲れさまでした。レス時間を確保するのに全力を尽くしていたため、ちらちらと伺う程度しかできていなかったのですが、きっと様々なドラマがあったのだろうなと、皆様のご様子を楽しく垣間見させていただいておりました。
そしてペアになってくださったエリックPL様。至らぬ点が数多くある中、最後までご一緒くださりありがとうございました。特に尖ったPCにもかかわらず、フォロー不足が出てしまって申し訳ない限りです…。そんな中、想いがこもったレスをいただき、誠にありがとうございました。いつも素早いスレ立てと、コンスタントにレスをくださったお陰で、のろまな活動ペースの身でありながらたくさんお話することができて嬉しかったです。会話や話の展開など先導していただいて、拙いところばかりですが引っ張られるように自分の文章力以上のものを描けたように思います。ロールでほんのり描写したことも細やかに膨らませてくださったり、姉姫や勝手に登場させたNPCも上手に使ってくださって、一緒に物語を作り上げている感じがしてとてもワクワクいたしました。
エリックさんのことは本編が始まる前、気弱そうで可愛らしい方だな〜という印象だったのですが、いざ始まってみればかっこよくて優しくて美しくて、驚いてしまいました。もう、大好きです…。そして意地悪してしまうかも、くらいのつもりだったのですが、どう応えてくださるのか楽しくなってしまって、色々と仕掛けてしまいました。無茶振りにも応えてくださってありがとうございます。初めてのペアさんがエリックさんになれてよかったです。
エリックさんとアナスタシアのことは生きる意味探索ペアと呼んでいました。王道に略すならエリアナでしょうか。語感が良きですね。人のために生きるエリックさんと、自分のために生きるアナスタシアの対称的な関係。生きる意味、うまれてきた意味を考える者同士。これってめちゃくちゃ運命的な巡り合わせでは…?一緒に生きる意味を見つけましょう…!と、意気込んでいたのですが、いざPCを動かしてみれば話を引き出すのが下手すぎて寄り掛かってばかりで、べたべたに依存させてしまいました。でもそんな関係性も大好きです。
アナスタシアの誕生話をしますと、「双子に対する忌避」「母の死」「産まれることなく死んだことにされた」とシリアス要素が揃えば、思いっきり気に病ませたい…!という趣向のもと、双子の生まれにコンプレックスを抱くPCとなりました。本編中「ふたりでひとり」に対して大反発しておりますが、はんぶんの姫様方がなさっていることを否定する意図はもちろんございませんと、この場をお借りして少しだけ補足をさせていただきますね。双子の姉がしきりに「ふたりでひとり」だと手を差し伸べるのは、一人の人間の立場しかないから、ふたりで分かち合おうという、善意ゆえの行動だとアナスタシアもわかってはいるのです。そんなものは望んでいないから、憎くて仕方がなくなってしまうだけで。
アナスタシアの課題である「うまれてきた意味」を、彼女自身の手で見つけてほしいなという気持ちがありながらも回答は用意しておらず、苦しい思いを抱えたままでも生きていってほしいなという思いがありました。ただせっかくのマルチエンドの舞台ですし、死があるからこそ生が輝くとも考えていたため、死へ追いやってもいました。アナスタシアが生きる道を選び、少しだけ前向きになれたのはエリックさんが幾度も言葉を尽くしてくださり、すくい上げてくださったお陰です。気難しいアナスタシアへ真摯に向き合ってくださり誠にありがとうございました。
まだまだ語りたいことは多くございますが、ラストアンケート提出に大遅刻しながらも、いただいた限りある時間の中で言葉を尽くせたかと思いますので、ここで筆を置こうと思います。また皆様とどこかでお会いする機会がありましたら大変嬉しい限りです。ありがとうございました!
(花のように、移ろう世界を謳歌できたなら。)[序章]
姫様、こちらにいらっしゃいましたか。ご機嫌いかがでしょうか。(不意に声を掛けてしまうのだから驚かせてしまわないよう、控えめで優しい声を心がけた。姫から二、三歩離れた位置で片膝を付いて跪く。昨日に顔を合わせたばかりであり、いくら深くお辞儀したとしても礼を欠いてしまうと思われたのだ。)本日より誠心誠意、お仕えいたします。どんな些細なことでも、何なりとお申し付けください。(首を垂れたまま、改めての挨拶は宣誓めいている。姫から何かしら声が掛かったなら、そこでようやく顔を上げるつもりで。)[序章]
私の名はエリック・フォンディライト、どうぞエリックとお呼びください。(己が胸元に手を添えて申し出るが謙虚さを忘れずに、姫へ委ねる形をとった。己にとってはたったひとりの守るべき姫であっても、姫からすれば己など沢山いる騎士のひとりに過ぎないことは重々承知している。ならば名を覚えてもらうのが先決であり、二度目の名乗りも厭わない。)[序章]
(孤児院や騎士団では呼び捨てされることが常であったため、敬称を付けられた響きの新鮮さに胸が震え、添えていた手をたまらず握った。)はい、存じております。アナスタシア様、私はあなたの剣となり盾となりましょう。[序章]
(立ち上がりざま地に付けていたほうの膝から下を撫でやるように手をかざせば、土埃のない姿で相対するだろう。姫の目前で衣服をはたくのが憚られたため微弱な風の魔法を使ったが、やろうと思えば子供でもできる簡単なものである。指差された方向を一瞥したのち、節くれだった武骨な手を恭しく差し出した。)本日は私を虫よけとしてお使いください。姫様が内緒とおっしゃる庭の魅力を、ぜひ拝見したいです。[序章]
(細く小さな手を賜ることが叶い安堵したのも束の間、手元の感覚が伝わって胸がきゅっと締めつけられた。表情こそ崩さなかったものの、増える瞬きが動揺を物語っている。)素手で武器を持たないと落ち着かない性分でして、……お見苦しいようであれば明日からは手袋を付けて参ります。(むしろそうすべきであったかとの反省もあり、もてあそばれているとは考え及ばなかった。)[序章]
(懐疑の色が見える姫の美しい瞳は、庭を取り巻く緑よりも、川の深いところを速く流れる水に似ている気がした。)[序章]
姫様がおっしゃる通り、私は世話好きなのかもしれません。誰かのお役に立てたとき、私は私が生きていると実感できます。何も成さない私には、何の価値もありませんし……ただ息をしているだけの置物にはなりたくない、というのが正直な気持ちです。[序章]
命を受けたときから、私の最上は姫様ですよ。[序章]
食べると元気になれるハニーキャンディです、甘いものが苦手でなければどうぞ。(朗々と告げるが、まあるい玉を簡素な紙で包んだだけの、何の変哲もない蜂蜜飴である。あるときは警備中の休憩に、あるときは街の子供たちにあげるために、飴玉を持ち歩く習慣があった。姫を子供扱いしたつもりはなく、先程までの元気な姿を見せてほしいという願いを込めて。)[序章]
(春を見送り、夏が過ぎ、秋を迎えるころには付き人としての振る舞いも板に付いてきただろうか。)[一章]
(部屋を見渡しながら顔を顰めたのは、衣装選びに難航したからではなかった。姫が気分転換か本気か分からぬぐらいに、刺激を求めてしまうほどの心労を抱えていたと気付けなかった己への苛立ちである。軽く息を吐いてから、肩越しに姫の方を振り返った。)もし、姫様が外へ抜け出したいとお思いならば、私は全力でお手伝いいたしますよ。変装は却って怪しまれますから、お仕事のフリをして堂々と正面から出ていきましょう。そのあと外でこっそり控えめな服に着替えて、人混みに紛れてしまえばいいのです。美しい御髪は、帽子で隠したほうが良いかもしれませんね。[一章]
(衣裳部屋に置かれている以上は一応どれも姫の好みに違いないのだろうが、不慣れな男が選び取るのは至難の業だ。一度足を止め、目を閉じて気持ちを切り替える。やおら目を開いて、ひとつ、またひとつ手に取った。オフホワイトのシンプルなフリルブラウスと、秋色のミモレ丈スカートを組み合わせて、姫へと向き直る。)姫様が秋を纏う、のはいかがでしょうか?(返事を待つ間は短かったかもしれないし長かったかもしれないが、今まで生きてきた中で上から数えて何番目かぐらいに、とても緊張していた。)[一章]
今の召し物も良くお似合いですが、あまりにも可愛らしいので色々と心配になります。(そのまま外に出れば町中の視線をかき集めてしまうとすら思えてならない。だから控えめな、でも地味すぎない服を選んでみた。予想外にも大絶賛を受け、恥じ入るように目を伏せる。)[一章]
(着替えてくるよう言い渡されれば面食らったものの、騎士が連れ添っていればお忍びが台無しであると確かに理解して、快諾したのち一旦その場を辞する。大股の早歩きで寮舎に戻り、あまり多くはない私服を選ぶのは先程と比べてとても簡単だった。シャツは制服のものを流用して、枯れ葉色のテーラードジャケットに袖を通し、黒のスラックスで締める。懸念材料は、武器を持ち歩けないこと。)……あまり使いたくはなかったのですが、仕方がありませんね。(あるものを手のひらに握りしめて、待ち合せの城門前へとこれまた早歩きで向かった。)[一章]
姫様、これを身に着けていただけませんか? 秋風の妖精が眠る指輪です、何かあったときには妖精が姫様を守ってくださいますよ。(姫へと差し出した手のひらには、ちょこんと指輪が乗っていた。小さな紅い石が飾られているシルバーリングだ。誰の指でも通るよう伸縮自在であり、実際は風の加護魔法が掛かっている代物であった。)[一章]
おつかれさまです、オリバーさん。……ああ、やっと見つかりましたか。良かったですね、姫様。(大きな箱を見下ろせば"それ"はあったが、扱いが些か雑だ。恐らく保管箱を丸ごと持ってきたのだろう、早く届けたいという気持ちは分からなくもない。後輩なりに気を使った会話にありがとうございますと謙遜混じりの言葉を返したが、鈴を転がすような声が場の雰囲気を一転させたのを肌で感じる。ああ、かわいそうなオリバー。)見つけ次第、連絡をとお願いしていたのは私なのです。御前でのご無礼をお許しください。(後輩の隣に立ち、固まっている彼の分まで深々と頭を下げて詫びる。数拍置いていて顔を上げ、大きな箱の隅にあるアクセサリートレイから、小ぶりな真珠のイヤリングを拾い上げた。)先日の社交サロンに出席された際、片方のイアリングを落とされてしまわれたのでしたね。これでまた、姫様のお耳を飾ることが叶います。(姫の疑問に答えるべく経緯を述べつつ、ハンカチを取り出してイヤリングをそっと包み、後輩の上着の外ポケットに優しく押し込む。)オリバーさん、あなたに新しい仕事ですよ。そのイヤリングを姫様の侍女へ届けるのです。さあ、行きなさい。(後輩の背中を軽く二回叩いて体をほぐしてやれば、「必ず届けてくるっすよ、ふたりともお気を付けて!」と元気よく去っていった。)[一章]
では、私たちも参りましょうか――お嬢様。(再び姫の傍らへ戻れば、いつも通りのお忍びの設定を持ち出した。先程のように姫が訝しむのであれば、確認を兼ねて問いかける。)お忍びの際は『お嬢様と、その下僕』という設定でしたよね? もう飽きてしまわれたのでしたら、次にしてみたいとおっしゃっていた『お隣に住んでるお兄さんと、可愛いお嬢さん』でも構いませんが……。[一章]
(姫を愛称で呼んで良いものが一瞬たじろいだものの、姫の望みと己の気持ちを天秤にかければどちらに傾くかなど明白である。)かしこまりました。それではお言葉に甘えさせていただきますね、可愛いナーシャ。(姫へ笑みを返し、恐れ多くも親しみと愛情、そして真心を込めて姫を呼んだ。ごっこ遊びにしては熱っぽい囁きにぎょっとする門番を横目に流して、姫の後を付いて行こう。)[一章]
(小さい姫がテディベアを抱いている姿を想像してしまい、緩みそうになる口元をどうにか堪えようとして、抑えきれないと悟れば顔を背けた。笑ってしまったのが、雰囲気で伝わってしまったかもしれない。下手に誤魔化したり言い訳するよりは、素直に謝るのが誠実であろう。深呼吸をひとつ置き、姫へと向き直る。)……すみません。小さかった頃のナーシャも、とても愛らしかったのではないかと想像して、つい。[一章]
『お隣に住んでるお兄さん』は世話を焼くのが好きで、お世話をさせてもらえる相手に……厚意を厚意として受け取ってもらえることに感謝すべきなのですよ。私が良かれと思ったことが、相手にとっては困ることだった、という場合もあるでしょう。今の場合で言えば、ナーシャはピスタチオの焼き菓子があまり好きでないかもしれませんし、クレープを召し上がったのでしばらく甘いものを控えたいとお考えかもしれません。私がいくら考えたところで、本当の答えはナーシャにしか分からないことがありますから。[一章]
(本質に先立つ実存はここに。)[二章]
オリバーさん、この子を頼みます。それから、馬車のカーテンは閉めるように伝えてください。絶対ですよ!(乗っていた馬を後輩へ預け様に強い口調で訴えたあと、得物を構えて前に出る。四つ足の魔物が数匹、木々の隙間を縫うように駆け出てきた。絶対に馬車には近づけさせまいと、双眸が冷たく据わっていく。ハルバードの先端の槍で深く突き、片側の斧で裂けるほど斬り付け、もう片側の鉤爪で重さを乗せて叩き潰す戦い方は、客観的に気持ちの良いものではないだろうから絶対に見られたくなかった。ちゃんとカーテンが閉められたか確認する余裕もなく、ひたすらに魔物を倒していく。群れを形成している魔物は次から次へと押し寄せて、他の騎士たちも必死に応戦していたことだろう。やがて魔物たちの勢いが衰え、尻尾を巻いて逃げていく個体が出てきたが、容赦なくその背にハルバードを突き立てた。)……何匹か逃がしてしまいました。止めを刺してきますね。また群れを呼ばれては困りますから。(近くにいた騎士へ口早に伝え、そうしてひとり、道を外れて森の中へ追いかけていこうと――。)[二章]
承服いたしかねます。姫様がお喜びになるとは思えませんし、それ以上お役に立てないのが心苦しいです。ですが、正当な理由があれば構いませんよ。たった一言、「私を死ぬ気で守りなさい」とでもおっしゃっていただければ、私は喜んで。(その一言は騎士にとって甘美な毒であり、自らの命をいとも容易く投げ捨ててしまえる呪文だ。姫が己の死を望むならば使うが良いと示唆したが、問うてきた姫の真意は測りかねた。)[二章]
私が片付けそこねた魔物たちが、別の誰かを襲うかもしれない。襲われた誰かが、ひどく傷つけられるかもしれない。そんなもしもを思ったら、いつも追いかけずにはいられなかった。結局は、私の過剰防衛に過ぎないんです。[二章]
大切な方をお守りしたい、尽くしたいと思うのは全て私の意思です。人が人を想うのに細かな理由はありません。しかし、姫様がお求めならば理由を追々用意いたしましょう。私が今いるべき場所は、在りたいと望む場所は姫様の傍らに他なりません。(周りに人がおらず、馬車で人目を憚れるとなれば、多少の緩みは許されるだろうか。ただひとりの親愛なる御仁へ、幸福を語るように本音を紡ぐ。)[二章]
(拒絶されてなお、下せずにいた手のひらに視線を落とす。己なんかよりも、姫のほうがずっと痛そうだ。)最上は姫様ひとりです。春の庭で私の手を握ってくださった、あのときの温かさを今でも覚えています。あれから、姫様は色んな所に私を連れて行ってくださいましたね。魔物を片付けるしか能のない、浅ましい私には過ぎたる幸福でした。(思い出を愛おしみながら、瞳をゆるく瞬かせた。たった数か月の間に、己は随分と人間らしくなったと思う。それまでは、ただ漠然と騎士として生きているだけの何かだった。そうっと前屈みになれば、姫と目線の高さが近づくだろうか。)拙い言葉で恐縮ですが、どうか聞いてください。私は姫様のことが、世界でいちばん大切で、だいすきです。……理由ならいくらでも、私の中に存在しているんです。姫様へ告げるに相応しい、美しい言葉を即座に用意できないだけで……。後片付けが終わったらお聞かせしましょうか。(そうしてまた性懲りもなく、恭しく手を差し出した。)[二章]
先程、馬車から降りてこられた姫様はとても勇ましかったです。私どもは見習わなければいけませんね。(熱のこもった尊敬の眼差しを向ければ、冗談でないと伝わるはず。自らを信じて行動に移せるのは素晴らしいことだと賛辞した。あの時は驚きが大きかったが、思い返してみれば姫に強く呼ばれ、己を求められていたのだ。疎まれてもいなければ、嫌われてもいない。重ねられる手に、温かな言葉が沁みる。)[二章]
(もてなしの席では食事をそこそこに、羽目を外す者が出ないか心配になり、特に酒好きで愛妻家の先輩騎士を注視していたが、よもや己が酒を勧められるとは思わず笑顔を固くする。)……私は嗜む程度でして、皆さん揃ってお酒を口にしてはお屋敷のご迷惑にもなりますし、(尤もらしい理由で断ろうと思ったのだ。だのに、姫の輝く瞳があまりにも眩しくて――差し出されたグラスを両手で受け取ってしまった。)それでは、お言葉に甘えて……姫様に給仕のような真似をさせてしまい、申し訳ございません。有難くいただきます。(注がれていく酒の強い香りに、噎せ返りそうになるのを必死に我慢した。酒は飲むが頻度は多くないし、度が強いものは苦手だが言い出せないのは己の未熟さ故であり、決して姫に強いられているわけではない。暫くグラスを持ったまま動けずにいたが、意を決して口にする。何でもないようにすぅと飲み干してしまったが、もし姫が気をよくして注いでくれたとしたら、三杯目で酔い潰れたであろう。酒気で頬が赤く染まり、両目が潤んでいる。椅子かテーブルがあれば、ふらふらと寄りかかっていたはず。)これ以上は明日に差し支えますので……。(離れたところから仲間の冷やかしや野次が飛んでくる。「エリックは相変わらず弱いな」「お前飲みすぎると豹変するからやめとけよ」など、あくまでも仲間内の馴れ合いであったが、酩酊した頭ではいつものように受け止められず、苛立ちからつい乱暴に首元のタイを緩めた。)姫様、どうか彼らの言葉はお気になさいませんよう……。(笑みを作ったつもりだったが、今どんな顔をしているか考え及ばなかった。怒っていたかもしれないし、泣きそうだったかもしれない。)[二章]
(すぐ近くに見える姫の楽しそうな様子に、瞬間的な苛立ちなど消え失せてしまった。崩れ落ちるように椅子へ座りこんで、姫の美しい声に耳を傾ける。酔ったとき独特の浮遊感に苛まれている身には、唯一の救いのようにも感じられた。)姫様、いけませんよ。酔った男に、優しい言葉をかけては……。(おぼつかない手を姫の頬へと伸ばしたが、触れられたかは定かではない。もし、許されたならば壊れものを扱うような手付きで、柔らかな頬を包もうとするだろう。)姫様がお優しいのは、私が付き人だからでしょうか。それとも、私だからですか。(熱を帯びた呼気に乗せて、甘ったるく囁いたのは奇しくも意趣返しとなった。一介の騎士が姫君に特別性を求めるなど、身の程知らずであるがまともな理性は働かない。しかしながら返事を待たずして、蕩けた瞳に重たい瞼が下ろされた。)[二章]
……来年になったら。姫様の成年祝いにワインをお贈りしたいと考えておりましたが、ご婚約のお祝いとして近々お贈りしても良いでしょうか。渋みが少なく、口当たりの軽い赤をご用意します。お口に合えばよいのですが。(控えめに微笑んだ。酒に強くない己が好むワインならば、ワインが初めての姫にも美味しく飲んでもらえるのではないかと。)[三章]
(距離が詰められ、良からぬごっこ遊びを願われた。顰めそうになった表情を平穏に保っているが、胸の奥はとても煩く騒いでいる。恐らく、婚約者との過ごし方に悩まれているのだろうと。己はその練習台なのだろうと思えば、少しだけ気持ちが落ち着いた。)姫様の望みとあらば――(秘め事のように囁き、姫の小さな肩へそっと手を伸ばした。拒まれなければ、己の胸元へ優しく抱き寄せてみよう。煩い鼓動が、姫に聞こえなければいいのだけれど。整えられた御髪を乱さないよう遠慮がちに、姫の頭を撫でやろうとする手つきは不器用そのもの。恋人ごっこを承諾したものの、経験の無さからぎこちなさが付きまとう。しばし頭を撫でていた手を下ろし、そのまま姫の輪郭をなぞって顎に添え、可愛らしい顔を上向けてみようか。)姫様、……目を、閉じて。(姫が己の言うことを聞いてくれるかは分からないが、次にすることは決めていた。躊躇いながら顔を寄せていき、姫が大人しくしてくれていたならば、柔らかな頬へ親愛のキスを。)[三章]
(姫が何かを取り出そうとしているのを見受けて、そっと視線を外側へ向けた。動きが落ち着いたのを感じ取ってから、これまたそっと視線を戻す。美しい黄金の石を頂くペンダントトップを人差し指で掬い上げた。)かしこまりました。これなら重ね掛けても大丈夫でしょう、それでは――。(深く息を吸い、目を薄めて詠唱を始めよう。)幾度の日が昇り落ちて、幾重に月が満ち欠けてなお、倦むことなく包括するはひとつなぎ。泡沫の最果てに、汝が我と乙女を繋ぐ楔となる。(編んだ魔法をヘリオドールに押し込めるため、唇を寄せていく。そして、射るように姫を見詰めた。三拍数えたあと指先からペンダントを解放し、背を伸ばしてにこやかに笑う。)[三章]
仕方のない世界で儘ならなくても、御心は姫様だけのもの。ご自身のお気持ちを、どうか大切にしてください。[三章]
(恋人ごっこは姫が飽くまで。さすがに食事の時間が近づけば、控えめに終わりを申し出たかもしれないが、望まれるならば今日はいつまでも付き合おう。姫の艶やかな髪を優しく引き寄せて、毛先に触れる程度の口付けを――。)[三章]
(迷夢より愛を込めて。)[四章]
(姫の婚約を知らされた、その夜に。有無を言わせず呼び出されたとなれば、悪い話を想定しないほうがどうかしている。客間でのごっこ遊びを誰かに見られてしまい罰を言い渡されるならばまだ良いほうで、このまま朝を迎えることはないかもしれないと覚悟した。己が姫を唆し、あるいは無理やり連れ込んだのだと言い張れば、姫の名誉は守られよう。だが、指定した時間通りに向かった先、意外な人物が待ち受けていたため唖然とする。)――国王陛下にお喜び申し上げます。[四章]
安く見られたものですね、私も。(そして、姫も。夜の真暗は都合よく色んなものを隠してくれる。己の醜い形相さえ、等しく。――無事に朝を迎えた騎士はいつも通りに過ごした。何も知らぬ愚者の顔で、姫の傍らに在る残り少ない日常を慈しむ。)[四章]
軽やかな赤と、とびきり甘いロゼを一本ずつください。赤は木箱に、ロゼはそちらの面白い箱に包んでくれますか。(どちらも贈り物だと察した店主が二股かと揶揄ってきたので)そうかもしれませんね。(こちらも冗談めいた返しをした。けたけたと店主は笑いながら、片方の箱を軽く叩いてみせた。本命はこっちだろうと。見事に言い当てられてしまったのがいっそ清々しい。それほど日を置かずして、姫へ婚約祝いとして赤ワインを贈った。もう一つのロゼは出番を待って眠っている。)[四章]
(倖せな日々の後味を、あなたと。)[終章]
お姿が同じというだけで、お二人を混同してしまったことを深くお詫び申し上げます。(心からの謝罪を述べ、瞳は不安げに揺れていた。許してほしいなどと図々しい願い出ができるはずがなかった、これから姫にする行為も含めて。)[終章]
私から姫様へ餞別の品をお持ちしました、どうかお受け取り下さい。(抱えていた化粧箱の蓋を開けて中身を見せれば、ワインが一本あるだけだ。目に付いた椅子の座面に蓋を置き、その上にクッションとワインを取り出したあと、改めて箱の中を姫へ見せにいった。飾り気のない細身の短剣が一本、箱の底で綺麗に収まっている。)勅命を受け、姫様のお命をいただきに参りました。姫様ご自身でお命を絶たれるのであれば、僭越ながら見届け役を賜りたいと思います。剣の扱いが不慣れであれば、私がお手伝いいたします。(高潔を謳われるのであれば他者の手に掛かることを嫌うかもしれないと、あくまでも姫を尊重しての提案だった。しかしながら己に寄せられた信用を全て投げ捨ているも同然で、姫を傷つけてしまうかもしれないのも承知の上である。)姫様が生を望まれるのであれば、亡命の伴に私をお選びください。あらゆる手を尽くしてでも、姫様を国外へ逃がして差し上げます。[終章]
お優しいお姉様、と。……まるでご自身はお優しくないかのようにおっしゃるのですね。(憐れみと残念な気持ちが半分ずつ混ざった声色となる。“アナスタシア姫”の基準が姉君で、妹君は合わせていただけだというならば、どれほど生きづらい人生なのだろう。)[終章]
つまり、私が命を預けるに相応しくない騎士だとおっしゃるのですね。さすが姫様、私の技量をよくご存じで。陛下を敬う気持ちはもうありませんが……そうですね、姫様が誰かの手に掛けられるぐらいなら、いっそ私が。(腰に携えているサーベルには触れぬまま、ゆっくりと歩いて姫との距離を狭めていく。姫が一歩踏み出せば、短剣が己に届く位置までやってきて、両足を揃えて立ち止まる。姫がさらに後ずさるようならば同じだけ前に進んで、両者の間隔を維持しようとするだろう。)[終章]
姫様、お待ちください!(行く手を阻むべく姫の前に立ち塞がろうとするが、横をすり抜けてしまわれたのなら、手を伸ばして引き留めようと試みる。)闇雲に立ち向かってはいけません。(――もし、姫があのペンダントを、ヘリオドールの輝きを身に着けていたとしたら。そして、騎士を恐ろしいと認識していたならば、秋風の妖精こと加護魔法が正しく発動するだろう。姫を守り助けるべく風が吹き、騎士は何の防御も取れないまま頬や指先に小さな切り傷を受けるだろう。それでもなお、伸ばす手を緩めないであろう。)無防備な私を殺せないあなたが、近衛に守られている陛下を殺めることなどできませんよ。誰にも預けない命で、何を成されたいのかお聞かせください。あなたは、生きたくないのですか!?(どうして、今更、産まれてすぐに、そんな呪いの言葉を連ねるのなら、生存を望んでいるのではないかと強く問いかけた。姫の肩なり腕なりを掴めたならば、痛めつけない程度に、けれども強い力を込めるつもりでいる。それが叶わずとも、姫の注意を引くぐらいはできただろうか。優しい騎士の姿をかなぐり捨てた男を拒絶したい気持ちが姫にあったならば、意を汲んだ風が男を容赦なく突き飛ばすだろう。――加護と呼ぶには強すぎる魔法を掛けていた。だいすきな姫を、守るために。)[終章]
うまれてきた意味を……。(視線は確かに重なっているのに、己ではない何かを見ているような虚ろな瞳が心配になる。問いかけられた言葉を胸の中で反芻して、そっと目を伏せた。)[終章]
赤子だった私を孤児院の前に捨て置いたのが両親なのか、あるいは赤の他人だったのかは定かではありませんが……私はその見知らぬ誰かに、姫様は母君様によってこの世界に送り出されました。私たちは考え続けることを課せられたのかもしれませんね。(罰というよりか、一生の宿題のような。前向きに捉えようとするのは、前を向いてほしい人が目の前にいるから。問いに明確な回答をしているわけではないので、はぐらかしていると不快に思われるかもしれない。だが、うまれてきた意味も生きる意味も各々が自ら導き出すべきもので、そして解を出すにはお互いまだ若い。姫の腕を掴んでいた力を緩め、その腕を伝い、短剣を握る手を恭しく掬い上げてみようと。)[終章]
うまれてきた意味を、もっと広い場所で考えてみませんか。例えば、海が見える町で。[終章]
姫様の望みとあらば喜んで。これより私は、あなただけの騎士です。うまれてきた意味を、生きる意味を、共に考えて参りましょう。ひとりでは難しいことでも、ふたりなら手が届くかもしれません。[終章]
これから向かう町で、姫様は素敵な殿方との出会いがあるかもしれませんね。その方と想いを結ばれて、ご結婚されて、めでたくお子様を授かり、温かな家庭で過ごされることが、きっと何より陛下への復讐になるのではないでしょうか。そのうち陛下が崩御された知らせを耳にして、そっと笑って差し上げるのがよろしいでしょう。(あの日に姫が描いてくれた輝かしい未来図を、今度は己から。本当は、そんな風に過ごすうちに復讐などすっかり忘れてしまうのが一番良いのだけれど、姫が王に向ける感情は簡単に片付くようなものでもないだろう。)私は姫様の騎士として、そして良き隣人として、いついかなる時も変わらずお力になります。お付き合いされている方と上手くいかないときは相談相手に、旦那様と喧嘩したときは仲裁役になりましょう。[終章]
姫様は私を転がすのがお上手ですね。広い場所に出られたなら、私が取るに足らない男だとよくお分かりになることでしょう。それでも、もし私に独占されても良いと思われるのであれば、いつか教えていただけますか。私は姫様をお慕い申し上げております。これが恋と呼ばれる気持ちなのかは分からないのですが……、お恥ずかしながら初めて感じるものでして。(自信なさげに一度落とした視線をどうにか持ち上げ、身を低くして姫と目線の高さを合わせに行く。うるさく騒いでいる鼓動を押さえつけるように、己の胸元に手を添えて。)確かに申し上げられるのは、あなたが私にとって特別な存在だということです。世界で、たったひとりのあなたが大好きです。(成年を経て恋のひとつを知らぬとしても生きるのに何ら問題ないと、気にも留めなかったが日々が今は悔やまれる。どんなふうにこの熱い気持ちを伝えたらよいのか困り果て、詩心も持ち合わせていないとくれば在りのまま告げるだけ。)[終章]
(いつから、騎士の分を超える想いがあっただろうか。いつ、と明確に言えないのがもどかしい。明るく優しい姫を好ましく思ってはいたが、より魅力を感じていたのは物怖じしない真っ直ぐな姿や、己を巧みに翻弄するいたずらなところであり、それが目の前にいる彼女だと確信したのが今夜だった。)[終章]
……嫌なことばかりではなかったのですね。(良かった、と呟きざまに涙が一粒零れ落ちる。生きていたって嫌なことばかりと先の発言には触れられなかったが、かといって気にならなかったわけではなく。己にとって幸せな時間であったように、姫にとっては楽しい時間であったのだと、心からの安堵がひとしずく溢れてしまった。)[終章]
では、私たちは晴れて両想いということで……愛しいナーシャ。(胸元に添えていた手を徐に伸ばして、姫の頬にそっと触れてみようとする。姫がきつく目を瞑ったりして緊張しているようであれば、前髪にキスを。もし、恐れずに目を閉じてくれるようならば、触れるだけの口付けを。どちらにせよ、名残惜しい気持ちを抱えながら身を離していくことになるだろう。)このまま姫様に触れていたいのは山々ですが、それではあっという間に朝を迎えてしまいますね。[終章]
(ひとつ、ふたつ、落ちていく輝きを美しいと思った。澄んだ双眸がこれから目にするものが、嫌なことよりも嬉しいことや楽しいことが多くなるように。願うばかりでなく、より一層の最良を尽くそうと決意する。)[終章]
……あなたが私の最上ですよ。(間際で目を閉じて、柔らかな感触を分け会おう。きっともう、最上も特別も眼前の彼女しか在り得ない。先刻に姫君のどちらも大切だとほざいておきながら、容易く姉君への忠誠を下げてしまうのは気が咎めたが、今や己は姫だけの騎士となった。愛しい人には、不安よりも安心を与えたかった。)[終章]
悪い私を、嫌いではないでしょう? それでは遠慮なく、派手に参りましょう。(ハルバードを両手で握り、斧の部分を力いっぱい振り下ろした。けたたましい音が鳴り響き、砕け散る破片は微かな光に煌めきながら落ちていく。氷柱落としの要領で、残った硝子を突き崩し、夜風に髪を靡かせながら姫を夜空へと誘うべく手を差し伸べた。)[終章]
――姫様、とお呼びするのはこれが最後です。愛しいナーシャ、良ければ私のことも親しみと愛を込めて『リック』と呼んでいただけませんか。(今の呼び方に不満など一切無かったし、さん付けも姫らしくて良いのだけれど、申し出るに丁度良い機会だと思われた。)[終章]
(追手を避けるため明かりは持たず出発し、星を読みながら途中で道を逸れ、風を頼りに暗い森の中を進み往く。追手が差し向けられるなら出来れば知らない顔がいいと思うが、見知った顔であれ容赦はしない。今夜は可能な限り遠くへ向かうつもりだが、姫に疲れが出ていないかしきりに確認しつつ。――無事に海が見える町に辿り着いたならば、愛しい人に一輪の花を贈ろう。二人きりの新たな日々を祝福して。)[終章]
(海を臨む小さな住まいで、駆け落ちした二人はそれなりに上手く暮らしていただろう。己は甲斐甲斐しく彼女の世話を焼きたがり、新しい仕事にも慣れてきたころ。付き人をしていたときには気付かなかったが、紅茶を何度か淹れていれば彼女の好みが何となく分かってくるのは面白かった。あまり時間を置きすぎないように、渋くならないように、彼女好みの程よい具合を見計らうのは紅茶を淹れる際のささやかな楽しみになった。紅茶と少しの菓子を用意して、愛しい人を窓辺に置いたテーブルに招く。ごく自然に椅子を引いて彼女が掛けたあと、己は向かいへと腰を下ろす。)[エピローグ]
これは、私が拾われたときに身に付けていた物でした。今の大きさではルーペがないと見えづらいのですが、内側に名前と日付が刻印されています。私の『エリック』という名前は、そこに彫られている名前なんですよ。それから、私の誕生日はその日付ということになっています。どうやら院長先生は、両親が私のために作った指輪だと思ったらしいです。(まるで他人事のように、わだかまりなく穏やかに語ったものの、一旦言葉を切れば僅かに陰りを見せる。心の機微のまま素直な表情を浮かべられるのは、目の前の彼女だからこそだった。)この指輪は、私と何の関係のない代物かもしれない。私の名前も誕生日も、もしかしたら誰かのものを借りているだけなのかもしれない。そんな風に考えて落ち込んだこともありました。……でも今は、この名前がとても好きです。あなたがたくさん呼んでくれるからですよ。[エピローグ]
あなたに祝ってもらえたら、ただ数えるだけだった誕生日も好きになれると思います。(珍しく望みを口にしてみたが、どうするかは彼女次第である。盛大に祝ってほしいわけでも、何か贈り物が欲しいわけでもない。たった一言、愛する彼女から祝いの言葉が貰えれば満ち足りる。)[エピローグ]
誓いを立てる彼の国の大地は遠すぎるので、あなたに誓います。共に考え、共に生きる愛しいナーシャ。どうか私と結婚してください。私の命をあなたに預けますので、どうぞ大事にしてくださいね。その指輪は、婚約の証に差し上げます。(一世一代の求婚を断られるとは露程も思っていないが、さて指輪の方はどうだろうか。付き返されたなら大人しく片付けるつもりでいるが、受け取ってもらえるのならば細い指に着けさせてもらおうか。指輪の紅い石は、彼女の可愛らしさを一層引き立てる差し色となるだろう。彼女の小さな手を求めては、忠誠と愛しさを込めたキスを手の甲に捧ぐ。)結婚指輪はちゃんと用意しますので、もう暫く待っていてください。それまでは恋人の時間を楽しみましょう。[エピローグ]
(海の見える町の、細い路地を入ったところにある隠れ家のような喫茶店で働いていた。雰囲気を好む落ち着いた常連客が多く、何より店主の人柄が良すぎた。家名を持たぬ己を煙たがらず、雇い入れてくれたことには感謝している。)[エピローグ]
ここからは提案なのですが、髪を短く切っ私を見てみたくはありませんか? 少しず髪を伸ばしていく私に、興味はありませんか?(テーブルに両肘をついて手を組み、少しばかり首を傾けながら楽しそうに誘いをかけてみる。)それとも、見慣れている私がいいですか?(髪を結んでいたリボンをするりと解いて、長い髪を広げてみせよう。すぐに重みですとんと落ちてしまうだろうが、彼女の目を引くには十分なはず。)あなた好みの私でいたいので教えてくれますか、愛しいナーシャ。(念押しの言葉を添え、彼女の返答を笑顔で待っていた。――男の髪が相も変わらず長いまま海風に靡いているか、短くなった襟足を海風が抜けていくのか。最愛の人がお気に召すままに。)[エピローグ]
私だけの騎士になってくれる?
うまれてきた意味を、生きる意味を、一緒に考えてよ。