Last Message
終幕の半分
伝わんねェ奴だな、“そのままでいい”って言ってんだよ。
Cyril Einsgray * Birthday 6.01
ご挨拶
half of breath、期間満了おめでとうございます。シリルPLとしてこの場にてご挨拶を綴らせて頂けること、とても幸せに思います。姫君と騎士が紡ぐ物語、場合によってはPC死亡ありとの表記に心躍らせたあの日は既に遠く。人間味溢れる感情豊かなPCよりも、仕事に忠実な感情の薄いPCの方が感情の揺れが感じられるだろうかと思い作り上げたシリル・アインスグレイと言うPCは後半に行けば行く程にそれはそれは私の頭を悩ませてくれました。思った以上に感情が薄く、他者への興味を抱かない。それは姫君相手であろうと同じことでした。お相手様であるレティーシャちゃんも歩み寄りは見せてくださるのですが姫君としてきちんと線も引いてくださっており、「あれ、これ素で話す機会無くない…?」と真面目に姫君へ剣を向けるEDを危惧したのも記憶に新しいものです。剣と金があれば良い、そんな男が感情を揺らすことになるのかどうか。それを楽しみに願書を綴ったものですが、三章にて彼女が涙を見せてくれたことで心は大きく動きました。動いた、と言うよりかは揺らいだ、の方が正しいでしょうか。それこそ生まれて初めて得たような感覚は、きっとこの先も忘れることは無いでしょう。騎士としての仮面を外したシリル、末姫としての役割を脱いだ女の子。初めてきちんと向き合えたような気がして、少し前進したような気持ちでした。涙を見せてくれたあのシーンが無ければ、恐らく切っ先を彼女へと向けていたでしょう。心を曝け出してくれていなければ、残念だと思う気持ちを抱きつつ、無表情のまま銀色を振り下ろしたのは容易に想像がつきます。
シリルとして彼女に生きて欲しいと願う気持ちに偽りは無く、外へ出たい、生きたいと彼女に口にして欲しくて。迷わずに真っ直ぐそう思う心が、彼女の気持ちを置き去りにしてしまっていました。他者を慮ると言うことを知らなかったが故の過ちではありますが、それ以降少しずつ、確実に歩み寄ることができたのは彼女が言葉を尽くしてくれたお陰です。
二人国を出ることで生存ED、とほっと一息ついたのも束の間。シリルPLとしてはより高い壁が待ち受けておりました。抱いている感情の名がわからない。彼女を生かしたい、そう願う心の理由。傍に在れれば満足で、彼女が幸せであれば良かった。答えが出ないまま時は過ぎ、通勤電車の中、休憩中、帰宅途中の電車の中、ずっと彼女の文章とシリルの心と向き合い続け、それでも答えは得られずに。ただの庇護欲、家族愛、同情、恋または愛。尖塔の内にて衝動的に彼女を抱きすくめたワンシーンがありましたが、あれもまた一つの分岐点かなと思います。書いては消し、書いては消しを数度繰り返した後、やはり衝動には抗えないとあのロールに至りました。あれと終章最後の彼女の言葉が無ければエピローグはもう少し変わったものになったのではないかな、と。本編最後の文章で得た答えをエピローグで伝えられたらと思いあのような形となりました。
お名前についても沢山悩み、沢山の言葉の意味を調べましたがしっくりくるものが無く。改めて二人分のプロフィールへと目を通した折、文字色の薔薇が共通点であることを思い出しました。ローズ。うん、可愛い。似合う。棘は無いけれど、綺麗に咲き誇る赤の薔薇のように。また、己が持つ赤を含めれば少しだけ独占欲も満たされるような気もして。片割れたる姉の象徴である薔薇と、その隣に在った霧がかった薔薇。二人ともを忘れることは無い、と言う意味で文字色のフォギーは敢えてそのままタイトルへ含めさせて頂きました。ローズちゃんPL様にはクリストローゼでアンサーを頂けたこと、とても嬉しく思っております。

三章以降、BGMは【月の記憶 - 月姫 -A piece of blue glass moon- Original Soundtrack】でした、とひっそり。お供は無糖の熱い紅茶です。

護りたいものを得て少しだけ弱くなり、強さを与えられ、果てに愛を知る物語でした。ある種人間味を帯びた、とも言えましょうか。八ペア、途中から七ペアが紡いだ物語の中でも少し毛色が異なるのかなとも思いますが、皆其々の個性が輝いていたお話だと感じております。本編期間中は自らの感情の整理に中々忙しく、他ペアを隅々まで追えておりませんので今後ゆっくりと追い掛けることでロスを昇華できれば、と。
最後になりましたが、ローズちゃん、ローズちゃんPL様には期間を通して大変お世話になりました。純真無垢の文字が似合いでありながら、大人びて笑顔で振る舞い続けるその姿を護りたいと思う心は今後も色褪せることはありません。多々お時間を割いて頂き、言葉を尽くしてくださり、誠にありがとうございました。幾度も引いた線を諦めず越えて来てくれたからこそ迎えられたエンディングです。願わくは、これからも幸せを祈ると共にPL様には時折思い出して頂けますとこれ以上の幸せはございません。シリルにとって光のような存在であるローズちゃんが、この先も笑顔でいられますように。違いますね、笑顔でいられるように頑張ります。シリルが。

瀬見様。素敵な舞台へとお迎え頂き、此度は本当にありがとうございました。このような時期と言う事もありぼんやりするような時間も増えておりましたが、設定を拝見したその時に抱いた参加したいと願う強い気持ちを受け入れて頂けたこと、心より感謝しております。期間中は充実した日々を過ごすことが出来、毎日があっという間に過ぎ去ってしまいました。一か月半と少しと言う決して短くは無い時間、最後までご一緒出来て光栄です。何度お伝えしても伝えきれるものではありませんが、本当にありがとうございました。

年の瀬、2022年も残り少なくなっております。時節柄冷え込みも激しく、流行り病も完全に収まったとは言えない日々が続きますが、皆様どうか健やかに、笑顔で過ごされますように。また、何処かでお会いできる機会がございましたら、その際もよろしくお願い致します。

2022.12.17 シリルPL
あの日のこと

……戦うひとね。付き人というには空気が猛々しいわ。どうしてわたしの付き人に?誰かに意地悪されているの?(見据えられて笑みを深める。優雅、と呼ぶには柔和さを欠いた騎士の佇まいは相応しい場所が別にあると指し示すようだった。とはいえ、どうあっても傍に置くしかないのであれば、内も外もよくよく検分してみなければ。)[序章]

今となっては懐かしいような空気感ですね。

ね、そうでしょう。…あなたは何処へでも行けるのね。(屋根がないところへ出れば、眩しさに目を細めた。)[序章]

PL的には頭を抱えるところでありますが、騎士的には首を傾げるのみでした。

わたしを呼ぶのであればそう変わらないと思うけれど、あなたはいろいろと気になってしまうのね。ううん…知らない名で呼ばれても気付かないかもしれないし……あ、つかまってあげるわ!(これも名案が閃いたとばかりに顔を輝かせて手を差し伸べた。今、繋がれずとも「ねえ、あれはなに?」と案内役の袖を引っ張るのだから結果は変わらないだろうか。菓子の甘いかおりに誘われて、ディスプレイの美しさに目を丸め、頬を染めて高揚を露わにしていた娘も、土産物を選ぶときは真剣な面持ちで口を噤んだ。硬貨の持ち合わせがなく、指輪で賄おうとするのは余談として。)[序章]

そうきたか、と真顔なシリルの裏側で天を仰ぐ私がいました。

ほら、見て。真っ赤でしょう?きれいだから、シリルを呼んだの。あなたとお揃いだわ。(丁寧な所作で騎士の規範をとるひとにひらひらと手を振って出迎え、曇りなく磨かれたガラスにぺたりと片手をつけて指し示した。この時節、燃えるような赤を来賓は褒め称えるらしい。豪奢な調度品が並ぶ部屋の残念なところを挙げるとするならば、バルコニーがないことだ。)[一章]

ポーカーを、と声を掛けて頂けるぐらいには距離が縮まっていることに喜びを覚えました。日常に在る景色から思い出してもらえるというのもまた嬉しいものです。

…――ありがとう。(短いセンテンスに想いを籠めた。それ以上、言葉にならなくて。承諾は予測していた。『お望みのままに。』『仰せのとおりに。』忠実な騎士らしい台詞が返ってくるものだと。それで良かった。わたしが“いつか”を望む日が来るのであれば、とやさしい夢を描いていたから。だから、否、けれど、予想を超えたやさしい言葉の連なりに、用意していた台詞を忘れた。与えられた肯定と承諾をうちがわで大切に包み込む。)[一章]

柔らかな響きを帯びた五文字だったのだろうなと思えるロールですね。レティーシャちゃんPL様の綴られるロールと台詞回しはどこも柔らかく、優しく、あたたかな響きを帯びていて大好きです。

なにも、なにも、なにもなかった……わたしには…なにも、…そ、んなこと……しって、たのに……わかりたく、なかった。(言葉にしようとすると感情ばかりが先走って喉が戦慄く。名付けられるのは楽しみと喜びだけ。頭や目の奥が痺れるように熱いわけも、ぽろりと頬を伝ったものも、わからないまま。)[三章]

此処まで騎士と姫君の線を越えず、仕事として割り切って動いてきました。恙無く、無難に、当たり障りなく。そのバランスを崩したのは、末姫の涙でした。同時に少しずつ、この辺りから彼女への気持ちが生まれ始めます。名前を知らない感情が。

……お父さまは、愛情深いおかたよ。(顔を上げずとも刺々しい気配が伝わってくる。けれど、触れる手にはやさしさがあって、こみあげるものをのみ込んだ。欲しがってばかりの幼さを恥じた。これ以上彼の前で子どもみたいに泣いてしまいたくなかった。父が、妻たちを、子どもたちを、見つめる眼差しを知っている。公平かつ厳格な騎士王。平和を貴ぶ為政者。その、たった一つの瑕疵が“わたし”というだけ。遣わされた騎士が彼でなければ、ともしびは潰えていた。)[終章]

騎士は王の“父”としての側面を知りませんし、大して興味もありません。ただ、彼女が自身を“たった一つの瑕疵”と口にするようであればその時点で良き父では無いのだろうなと確信はできます。全てに於いて完璧な人間などいないのですけれどね。

…シリル。(こころがいっぱいで、ざわめいて、もつれるように声まで震えてしまった。“ありがとう”も“ごめんなさい”も足りなくて、“喜び”も“哀しみ”も綯い交ぜになって、せめぎ合う真ん中に彼がいた。彼が手放したものを想う。彼が揺らした天秤のかたちを想う。この先どんな神秘を手に入れようと彼が差し出してくれたものには見合わないだろう。それでも、)[終章]

名を呼ばれることの喜びを知りました。同時に、此処から芽生え始める執着心に私自身が疑問を覚えます。この感情は何だろうか。庇護欲、同情、恋、愛、そのどれもが綺麗にあてはまらないような気がして。傍にいたい、手放したくない、けれどその理由がわからない。長年この世界におりますが、初めて行き当たった壁でした。それほどにシリルと言うPCがそういったものとは縁遠かった、と言う事なのでしょう。終わりも近付いているのにどうする、と仕事そっちのけで昼夜問わずシリルの心と向き合いました。

あなたがレティーシャと呼んでくれたとき、とても嬉しかった。けれど、名前のかたちはべつになんでもいいの。あなたが呼んでくれれば、「おい」でも「おまえ」でも振り向けるわ。……それでも、あなたに名前をつけてほしい。(姉へ差し出せなかった喜びを懐かしむように紐解いた。あの日には背を向けていたけれど、目の前にいるひとにゆるんだかおのまま微笑んで――込み上げる気配に彼から手を離した。)[終章]

それはまるで一つの儀式のようで。名前を与えてしまうと、この感情がきっと抑えられなくなる。そう感じました。彼女を外の世界に連れ出して、彼女らしく生きて欲しい。沢山のことを知り、沢山の人と出会い、幸せに、笑顔でいて欲しい。それが第一でした。傍に自身がいなくとも。外へ出た先で素敵な人と出会うこともあるでしょうし、自立もきっとできるでしょう。彼女の先を歩く大人として、その背を押したいと思う気持ちに嘘はありませんでした。内にある感情はまだわからないまま棚に上げて、綺麗に線を引きました。

………わたしが考えたのは…名前を付ければ愛着が湧くでしょう…?…だから、あなたがわたしを棄てるときに、あなたが一瞬でも、手を止めるものがほしかったの。[終章]

執着を恐れたが故の線引きに対し、手を離さない為の術として名前を求めるその手腕。必要だからと望まれているのでは無く、明かされた理由は胸に突き刺さりました。

よかった。……あなたの恐怖を晴らすのは、わたしがいいなって。(我儘な秘密を息を吐くように告げた。細さも、長さも、厚さも、双子とは異なる手の容を見つめる。大切にしたいと想うけれど、姉へと向けるものとは重ならない。望みのないところへ手を伸ばすのは似ていたけれど、父へ求めたものとも違う。たくさんの言葉を尽くしたけれど、まだ足りない気がした。)[終章]

失うものを何も持たず自由に生きてきた身は、大切なものを得ると同時に弱さをも手にしました。失うことへの恐怖と、手放す寂しさ。それらを少しでも晴らそうとしてくれる彼女の言葉と行動は、まるで闇に輝く光のようでした。

えっと、では、もっと?(笑みのかたちに目を奪われ、考える間もなく言葉を放っていた。語尾を上げて投げかける装いは表面上のもの。)[終章]

は???可愛いかよ。

――シリル。見て!(晴れやかに呼びかけて、ながい夜の終わりを指差した。名前を呼べるだけで、胸が満ちる。目と目が合えば、溢れて、)大好き。(面映ゆくも、伝えられる喜びがまさった。自然と笑みがほころぶ。うつくしい空のうつろいを揃って見上げられることが嬉しかった。旅の途中ではあるけれど、朝を迎え、当たり前に彼と一日を始められることも。昨日までも“しあわせ”だったけれど、今日はもっと“しあわせ”だと感じることも。すべて真ん中に彼がいた。きっと、これからも。一つ一つを数えて、一日一日を重ねて、そうして、あなたと分かち合えますように。“いつか”の先まで。)[終章]

夜の終わり、朝を迎えるその時に。呼ばれた名前と、伝えられた感情。二人が迎えた最後を読んだその時に、ぱちりとピースがはまったような感覚を得ました。誰にも譲りたくない、彼女の隣は己が良いのだと。“好き”と言う感情を、初めて理解できた終わりでした。沢山の気付きを与えてくれたレティーシャちゃんには感謝しかありません。本編の本当の最後の最後に、男は答えを得たのです。感慨深い。

剣があればいいと少年の面影をみせたひとから剣を奪おうとは思わなかった。けれど、少女が無条件に賛同できた訳ではない。致し方ないと納得もできなかった。『その日のうちに帰ってくること、怪我は隠さないこと、場合によっては痛みだけでなく傷も委ねること。』と約束を求め、聞き入れられないのであれば一緒に行くと言って彼の剣を抱きしめて放さなかった。[エピローグ]

三つともそこそこに厳しいのですが最後の部分の破壊力たるや。頭抱えて溜息吐いたんだろうなぁと笑ってしまいました。当人にすれば笑いごとでは無いのですが。

……わたしも、愛してる。(せっかく張ったものを彼は容易く越えた。同情でも誤解でも何でも良かった。彼が傍にいてくれるのであれば。好意を、大事にしてくれるこころを疑ったことはなかった。ただ、感情に名を付けるのが怖かった。“愛”はもっと美しいものだと思っていたから。とおく離れようとしあわせを祈り、願えるような純粋なものだとおもっていた。見返りを求めずに捧げるものだと。“恋”と名付けるのも不吉だった。裏切られ破れるものだと想っていた。盲目に破滅を迎えるものだと。それでも、彼が名を付けるのであれば、傍にいたいと望み、現在と未来を指輪で繋ぐものを愛と呼ぶのであれば、愛と呼ぶことを赦してもらえるのであれば、ずっと、伝えたかった。)[エピローグ]

感情に名を付けるのを恐れた彼女と、感情の名を知らなかった男。本編中に届けられなかった言葉を、気持ちを、エピローグにて伝えられたことはPLの中でも非常に大きく。心を整理してから綴ったものでギリギリでの投稿となってしまいましたが、同じ言葉を返して頂けて幸せです。指輪をすぐに欲しがってくれるところにも幸せを感じていますが、気が変わることなどこの先無いのだと伝えられるようになるまではもう少し掛かるでしょうか。二人とも線を引くこと無く、素直に心を伝え合える日を迎えられた幸せを大切にしながら過ごして行きたいと思います。