終幕の半分


お初にお目にかかります、エリックPLでございます。『half of breath』様のふわっとした優しい雰囲気に、ひっそり影を落とす“半分”の秘密に胸がときめき、叶うならば騎士として参加させていただきたいと思い立ったのが随分前のことのように感じられます。
約一か月半の本編を共にし、エピローグで二人のその後を描いていただいたアナスタシア様とPL様に、まずはお礼申し上げます。たくさんお話できて、とても楽しかったです! 終章での言葉の応酬も、非常に楽しませていただきました。時には本音のぶつかり合いも大事ですよね。エリックには遠く及びませんが、アナスタシア様への熱い思いは「好きなシーン抜き出し」のほうで綴らせていただきました。アナスタシア様が素をぽろっと出したあと、取り繕うようにお姉様を装うシーンも好きでした。その長年の習慣が薄れて次第に無くなったらいいなぁと、そこはかとなく願っております。アナスタシア様がエリックと共に生きることを選んでくれたのが本当に嬉しくて、こちらが考えていた以上にエリックは憎からず思われていたんでしょうかね。ありがとうございます。アナスタシア様はこれからますます可愛く綺麗に美しくなっていくのでしょうね…。美人がいると町で噂にならないか、変な人に目を付けられたりしないか、エリックは恋人だからこその気苦労に見舞われてしまえばいいと思っています。ヘリオドールに掛けた加護魔法はそろそろ切れてしまうかもしれないので、もしかしたらこっそり掛け直しているかもしれません。どうかこれからも手放すことなく、身に付けていただければ幸いです。アナスタシア様とエリックは、お互いの良いところも悪いところも認め合いながら、時にはちょっとぶつかったりして不器用に仲直りをして、甘やかな触れ合いもしながら穏やかに暮らしていたらいいなと思います。うまれてきた意味や生きる意味は共に考えながら、二人きりの時間を重ねていくうちに自ずと見えて来るかもしれませんね。
エリックという男は“お姫様を可能な限り生存させるにはどうしたらいいか”を起点として出来上がりました。もしものときはお姫様だけを迷いなく選べるように。爵位があると家柄に傷がつくかもしれない、家族がいれば迷惑が掛かるかもしれない、それらの不安要素を削ぎ落とした生い立ちとなりました。アナスタシア様に「最低」とののしられるべきは私でございます。エリックが自らを卑下していたのは、他者に酷いことを言われる前に自分から先に言ってしまえば、それ以上は言われまいという、ある種の自己防衛だったのではないかと終わりを迎えて思いました。きっと今は、アナスタシア様に想われている自分を卑下することは、アナスタシア様に寄せられている想いをも無下にしてしまうことだと理解していることでしょう。エリックという名前は、呼びやすさ重視でパッと浮かんだものでした。便宜上の姓とした孤児院の名前「フォンディライト」はギリシャ語で音を意味する「phon」と、歓喜を意味する「delight」を繋げた造語でした。名前が単純なので、姓にあたる部分はちょっと遊んでみました。
ペアアンケートを提出した際、希望理由に「姫様に思いっきり振り回されたい」と添えていたんですが、アナスタシア様はまさに希望を叶えてくださいました。本当にありがとうございます。こちらもそれなりに振り回してしまった自覚はあるのですが、少しでもお楽しみいただけたのなら幸いです。誰かのために生きるのが嫌なアナスタシア様と、誰かの役に立って生きたいと思っているエリックは対照的で、それが歯車のように上手く噛み合ったペアだったなぁとしみじみしています。終章でお互いが涙を零していたところで「デンドロビウム・ファレブノシス」という歌が脳裏を過りました。もし、ご興味ありましたら是非。
世界観的には姫様の唯一性のため、交わることのなかった他ペア様方のご活動も大変興味深く拝見しておりました。そのお二人だからこそ紡がれていく物語が、どのペア様もとても素敵でした。皆様どうかお幸せに…!
姫様方、騎士様方がとっても魅力的な方ばかりでしたね。騎士の全員が揃って魔物討伐に出かけたりしたらそれぞれ得意なものが違うのでバランスが取れていいんじゃないかなとか、双子のあれこれはさておき姫様が一堂に介してお茶会していたらきっとすごく華やかだろうなぁとか、在り得ないもしもを想像するほどに、皆様のファンです。
瀬見様にはいつも細やかなお心配りやお声がけをいただき、ありがとうございました。迅速かつ柔軟な対応には、尊敬の念を抱いております。Noteを拝見しながら、瀬見様のお人柄にも惹かれておりました。お人柄が伺える優しさに溢れた文章が好きです。「楽しくお腹を痛めながら」という表現が特に好きで、好きなシーン抜き出しのコメントで何度か引用させていただきました。それから「王様をぶん殴りたければ」という一文は、驚きのあまり思わず二度見してしまいました。
皆様のこれからのキャラレスライフがより良きものでありますように、そして佳き年を迎えられますようお祈り申し上げます。今年の冬は寒さが厳しいようですので、どうか温かくしてお過ごしくださいませ。
改めまして、皆様本当にありがとうございました!
(多くの騎士がいる中で、義務感に駆られず覚えることができる、ただひとりの名前となるのだろう。)エリック・フォンディライト。エリックさんと呼ばせてもらうわね。[序章]
――そうね。ここにはよく来るし、ハーブが虫よけになるのは興味あるわ。でもその前に、もっと重要な問題があると思うの。(真剣な面持ちで逡巡。口を開きかけて一度閉じ、たっぷり時間を掛けて躊躇って、考える時間もあった筈なのに、結局は眉を吊り上げ勢いに任せてしまう。)ねぇ、もしかして「お立ちになって」って言わないといけない? 騎士様って、一度跪いたら許可がないと立てなかったりする? それとも頭が高いって怒られたことでもあるの?(先は騎士らしい振舞いを褒めた口で非難めいたことを連ねながら、地に付く片膝へ視線を落とす。)立つのが嫌なら、座るところもあるけれど……。[序章]
手、意外とゴツゴツしてるのね。所作が綺麗だから気づかなかったわ。(手を握りしめてみるのは、緊張しているという言葉に悪戯心が芽生えたせい。[序章]
でもやっぱり好きなものは教えてあげない。気が向いたら見つけてみて。(ちっとも悪びれずに断れど、瞳に悪意はなく、穏やかな色を湛える。今日この日のように見つけてくれたらいいなと思ったから。)[序章]
……さっきまでしょぼくれてたのに、よく人を気遣えるわね。甘いものは、嫌いじゃないわ。(のろのろと顔を僅かに上げて、呆れたように笑ってしまう。憎まれ口に近いことを言いながらも、その声に棘は含まれず、そっと飴玉を受け取ろう。)[序章]
これから何度か聞く「嫌いじゃない」の記念すべき1回目ですね…と振り返れるほどにアナスタシア様と積み重ねた時間を感じてしまいますね。
念のため言っておくけれど、好みを当ててほしいわけじゃないから。[一章]
(そして、騎士のいつも通りきっちり着こなしているであろう制服姿に目を向け、)私着替えるから、エリックさんも着替えてきていいよ。城門前集合ね!(命令やお願いというよりも、当然といった調子で宣言する。)[一章]
あと、着替えを手伝ってほしいとは言われなくて、ちょっとホッとしました…。アナスタシア様の程よい意地悪さがたまりません。
……妖精が? うん、借りるね。できるだけ起こさないよう気をつけるわ。(差し出された指輪には興味津々。両手で丁重に受け取り、ぐるりとリングを見回した後、妖精の姿を紅い石に探す。)[一章]
……本当に、私のもの?(少なくとも“私”じゃないけどね、という理不尽な不機嫌さが声に滲み出て、表情はすっかり抜け落ちていた。忘れているとも、否定されているとも、疑われているともとれる言葉に、年若い騎士は目を見張り固まる。先輩、助けて。)[一章]
年若い騎士は震えあがって生きた心地がしなかったでしょうね、ぷるぷる震えている姿が浮かんでしまい思わず笑ってしまいました。
今日だけは親しみと愛情を込めて『ナーシャ』って呼んでくれてもよろしくってよ、エリックお兄さん。(何事もなかったかのように、『可愛いお嬢さん』を演じて、にっこりと笑んでみせる。)[一章]
……長い付き合いなんだ。ままならないこともあるよね。(妖精に、憧れがあった。どんな物語があるのだろうと膨らませた期待に後ろめたさを覚えて、伏し目がちに、呟くように声を落とす。妖精ともうまくいかないことあるんだなって。元は仲がよかったのなら尚更、悲しいことのように感ぜられた。)[一章]
そうね、今が“可愛いナーシャ”なら昔も可愛いのではなくて。[一章]
ワインっておいしい? 今後の人生でワインを飲むか飲まないか、エリックさんの手にかかってくるわ。責任重大よ。(悪戯にプレッシャーをかけて、笑みを浮かべる。アルコールに興味はなかった筈なのに、楽しみになった。)[一章]
責任重大でしたね、本当に…。アナスタシア様はその後、ワインを飲んでくれるのかなぁと今でもそわそわしているのですがいかがでしょうか。そも、エリックが酒に強くないので一緒に飲む機会もあまりなさそうですね。
(そうして後日、騎士を自室に呼びつけ差し出すペンダントトップは、黄金に煌めくヘリオドール。本当はアンバーがよかったのだけれど、インクルージョンに個体差が出てしまうから、次にピンときて選んだものだった。太陽の名を冠するその石は、彩りが失われゆく時のなかでも、美しい輝きを放ち続けよう。)[一章]
宝石に知識のあるご様子が、王室の姫様らしくて惚れ惚れしますね。ヘリオドールもアンバーも黄色系の宝石で、もしかしてエリックを意識していただいてるのかなぁと感じて嬉しくなりました。
(扉を開き地に降り立ち、興奮に嘶く馬を宥める御者の目を潜り抜ける。騎士が動き出してから外へ出た上に走りにくい服装で、もしかしたら追いつけないかもしれない。その姿が見えようと見えなかろうと、眉を吊り上げ語気を荒げよう。)エリックさん! ちょっと待ちなさいよ![二章]
なんで誰も、止めようとしないの。(落ち着きを取り戻し始めた森に、甲高く捲し立てる声はよく響こう。耳にしていた騎士たちは、困ったものを見るような目をしていた。あるいは、苦笑。その視線に怯み、困惑に眉を寄せ、問う言葉は勢いを失う。)[二章]
それから騎士たちの描写が、あぁ…エリックのことよく知ってる人たちの反応だな…って有難いやら申し訳ないやらで、アナスタシアPL様の技量に脱帽していました。
たとえ馬鹿げたことでも、やりたいことはやるべきだと、私は思うよ。規律とかどうでもいいし。でもこう伝えたら、私の考える通りにしようとするのかな。よく、わからないや。(出逢ってから僅かしか交流を重ねていないのだから、人となりがわからないのも、当然なことなのかもしれない。だから、これはわかろうとするための問いだった。)エリックさんは、私が死んでって言ったら死ぬの?[二章]
そっか。エリックさん、ちゃんと断れる人なのね。(ぽつりと、拍子抜けしたような呟きには、安堵が込められていた。)[二章]
ずっと訊いてみたかったのだけれど、エリックさんの最上って、たくさんいるの?[二章]
(彼を、孤独を埋める道具にしようとしているのではないか、と。憧れを穢したくなどない。)[二章]
汚い言葉でいいよ。できないことも教えて。[二章]
……私も、エリックさんのこと、嫌いじゃないわ。(どうせ姉のことなんでしょ、とは思わなかった。先程まで姉として忠誠を受け取ろうと覚悟を決めていたのに、きっとこれこそが、正しく想いを受け取るということなのだろう。受け止めきれずに眼から溢れそうになって、精一杯見開いて、ただ一人の騎士の姿を目に宿した。)[二章]
また、描写の丁寧さにうっとりします。きっとアナスタシア様の瞳は、どんな宝石よりも輝いていたのでしょうね。
ちっとも怖くなんてなかったわ。エリックさん、強そうなだけじゃなくて強いんだなって呑気に眺めていたくらい。でも、緊張感が持てないのも気まずいから、魔物の恐ろしさは教えてほしいかも。(目に焼き付いた光景を浮かべれば、不謹慎にも活き活きと話し出してしまい、すぐにばつの悪そうな顔で上書きする。)[二章]
なら隠さず言ってしまおうかしら。正直、お姫様なら誰でも良いのかなって思っていたの。だって「命を受けた時から最上」だなんて、いくらなんでも早すぎて不審だわ。(包むのを止めたら酷いことを言いそうだから、柔らかな口調に留めおく。「ふたりで一人」とは今も決して思わない。けれど騎士の想いは本当で、姉だけでなく己にも少しは向けてくれているのだろうと理解して、受け取ることにした。ただそれだけ。)[二章]
温室で守られているからこそ伸ばす羽根がある蝶も、いるのかもしれなくてよ。(癪なことにね、とは続けずに、にっこり微笑む。)[二章]
エリックさんってお酒好きなの? 注いであげる。(わくわくと輝かせた瞳に、善意よりも好奇心による行動と伝わるかもしれない。グラスを差し出し、もう片方の手にはアルコール度数の高い酒瓶。あわよくば酔い潰す気である。)[二章]
エリックは酒に強いのか弱いのか、どっちにしようか非常に悩んだのですが酔い潰されたかったので弱くしました。お酒は好きだけどあまり飲めない残念な男です。
酔うとどう変わるの? 怒りっぽくなる? 泣きたくなっちゃう? いつでも八つ当たりしてくれて構わないし、泣いたら泣き止むまで見ててあげるね。(人に酒を勧めておきながら自身の片手に持つのは葡萄ジュース。周囲の声を拾ってにこにこと意地の悪い顔で酒癖を問い詰める。)[二章]
エリックは酒に酔うと自制心が弱くなり、まともな理性が働くなります。でもすぐに寝ちゃうので安全です、多分。
優しくした覚えなんて、ちっともないわ!(貸していた肩から腕を外し寝台へと放り捨て、既に休む者のいる夜更け、乱雑に扉を閉める音が響き渡る。姉への言葉だろうと答えは出さずにいたけれど、付き人だからか、彼だからか、ぐるぐると脳を駆け巡っていた。)[二章]
姫様に送り届けられてたぞーって同僚から後日に聞かされたとか、あるいは同僚たちがなんか意味ありげな視線やら妙によそよそしいやらのフリーソロールを投稿したかったのですが、ちょっと時間が足りませんでした。
(宛もなく歩き始めて、振り返る。着いてきてくれてるのかなって、初めて気になったから。)[三章]
……先を見据えるのが早いのね。得られたとしても、僅かな機会のために、頑張るんだ。(この先どうなるか、想像はできていない。けれど、騎士が努力したとて、その成果を享受するのが、姉だけになるのは確かだった。光景が目に浮かんで、あっという間に声は沈み、すっかり笑みの抜け落ちた顔で見つめる。)[三章]
今は部屋に戻りたくない気分。拝借してしまいましょうよ。(普段から空き部屋を勝手に使用する身。国賓を丁重にもてなすため整えられた場へ侵入することにも抵抗はなく、悪行へと誘うように、口角を上げる。いつもなら困らせようと楽しんでいただろうに、口元だけが笑みを形作っていた。)[三章]
……勝手に贈ったら。許可をとるようなことではないもの。(本当は、嫌だった。選んでくれるのを、楽しみにしていたのに。何気なく言ったことだとしても、律儀に守ってくれるのだろうと疑わずにいたから、こんな形で違えられようとは思わなかった。嫌だって、言えたらよかったのに。)[三章]
(確かめるように、一つ一つ。そして、ゆっくりと言葉を重ねていく。)いつかはエリックさんも結婚して、子供ができて、温かな家庭を築くのかな。付き人としての実績が買われて、新たな人へ仕えるよう命じられることも、あるのかもしれない。これから送る長い人生の中で、今よりも大切な人ができて、その人のために、生きていくのでしょうね。(それも悲しいことだけれど、そうであって欲しかった。仕方がないことだと、諦めがつくから。別れを惜しむように目を伏して、じわじわと浸食する、どす黒い感情を覆い隠す。己に差し出されていたものが姉のものになってしまうくらいならば、綺麗さっぱり跡形もなく、忘れ去られてしまいたかった。)[三章]
エリックさんの人生は、エリックさんだけのものだから、勝手にすればいいと思うわ。[三章]
(身勝手な話を心遣いだと勘違いするのも、意地悪を優しい言葉だと勘違いするのも、姉がいつも優しく接しているからなのだろう。姉を装っている上で理不尽なのはわかっているのに、何でも好意的に解釈する騎士に腹が立ってくる。八つ当たりの許可も得られたことだし、誤った認識も、何もかも、ぶっ壊してやろう。)ねぇ、エリックさん。(隣に座る騎士へ、肩が触れそうな距離まですり寄って、心の荒れようとは裏腹に密やかな声で告げる。)恋人ごっこしましょうって言ったら、叶えてくれる?[三章]
(――すべてが姉のものになるくらいなら、今まで築いてきたものを壊してしまおうかと思ってたのに。頭を撫でられるうちに悪どい気持ちはあっという間に萎んで、こわごわと広い背に腕を回そう。)[三章]
(輪郭をなぞる指先がこそばゆくて、吐息のような笑みを零し、顔を持ち上げられれば視線は交わろうか。短い指示に顔を赤く染め上げて、)は、はい……。(応える声もか細く、緊張でいっぱい。ぎゅっと目を瞑り待っていれば、訪れた頬への感触に、ぱっと瞼を開く。)……目を閉じたら、口にするものではないの。(頬に手を添え、拗ねたように言ってみせて、胸元目掛けて頭突きを試みるのは単なる照れ隠し。)[三章]
だから、最上として扱ってもらえるのは、嫌じゃないわ。あれこれ私のためを考えてくれたり、世話を焼いてくれたりするのも。(ことあるごとに謝罪し許可を乞う騎士に、短くも精一杯素直な意思表示。同じものを姉が享受しようとも、この先姉だけが想いを受け取ることになろうとも、こんな大それたことを願い叶えてもらえるのは自分しかいないだろうから、それで満足することにした。)[三章]
……両想いが一番よね。(頭突いてもびくともしない身体に顔をうずめて、細々と理想を口にする。恋人ごっこを提案しておいて、本当は純粋な恋愛に憧れがあった。表向き、政略結婚を肯定する姉だって同じように。)[三章]
わかりやすく大事にしてもらえないと、わからないわ。[三章]
……エリックさんは離ればなれになっても、役に立てているなって実感持てるの?[三章]
(本日の装いは襟元が詰まった正礼装。秋と冬の境目に適した、暖かなベルベットを背景に、ヘリオドールは輝く。)[三章]
(返ってくる言葉は何でもよかった筈なのに、やるせない、という言葉に本心が伺えた気がして、思わず笑みが零れる。)ふふ、そう。寂しいのね。泣いてくれたっていいのよ。(気遣う素振りをまったく見せないのだから、“心優しいお姫様”とは程遠い。)[三章]
私、エリックさんとのお別れは、仕方がないことだと思っていたの。話が突然で驚きはしたけれど、少し考えれば当然なことだったなって。でも、魔法を掛けてもらって欲が出たみたい。やっぱりお別れは、嫌になってしまったわ。(寂しいとは素直に言えなかったけれど、ようやく正しく別れを惜しむことができて、ヘリオドールに視線を落とす。)[三章]
(双子であることは絶対に、知られたくはなかった。騎士とは完全に、決別しなければならない。けれど考えないようにしている己が行く末、孤独でどうしようもなくなった時、結んでくれた繋がりは、心の寄す処になる気がした。)[三章]
(――父王に命じられずとも、双子の真相を隠すのは己の意志だった。人目を避けて、ただただ引き籠もるだけの日々。何のために生きているのだろうと、思うことがある。それでも国と民のために生きる姉のように、大切な者のために生きる騎士のように、誰かのために生きることはしない。他ならぬ自分のためだけに、この命を使いゆく。)[三章]
三章タイトル『(命の使い方。)』と繋がりを持たせた見事な締め方にも感服しておりました。
(ひとつしかないものは分かち合えないように、一人の立場を二人の人間が分け合うなんて、馬鹿げている。明確に道が分かたれた今もなお「ふたりでひとり」と手を差し伸べてくる姉と、永遠にわかりあえることはないのだろう。)[四章]
(別離を受け入れようと諦めきれなかった想いは、川の底に澱む泥のように在るのだから。)[四章]
アナスタシア様の瞳の色を「川の深いところを速く流れる水に似ている」と序章でエリックが思っていたのを、こっそり汲んでくださっているのでしょうか!? 拝読してからずっとそわそわしているのですが…! 見当違いでしたら大変申し訳ないのですが、もしも狙い通りでしたら見事に命中しておりましたよとお伝えさせていただきますね。
(たどり着いた先は壁面が硝子張りになった一室。椅子の背もたれへ手荷物を掛けて身軽になった後、窓辺へと身を寄せる。魔法で被膜した特殊な硝子は、内側からは透明性を保ち、外側からは鏡のように空の色を映すらしい。存在を秘すのにお誂え向きだと、冷めた目で外を見渡す。[終章]
尖塔の中にこんな素敵な一室があったのですね、感動しました。良いタイミングがあれば硝子を割ってやろうとずっと企んでいました。
……謝るようなことではないわ。意図的に、隠していたのだから。(知られたくなかった。何のために。胸に去来する数多の感情に目を伏せたのは僅かな間。キッと睨みつけ、今しがた初めて対面したかのように挑もう。)初めまして、エリック・フォンディライト。私こそがキュクロス王家の真の末娘、アナスタシア・キュクロスよ。(春の日に確かめた響きを繰り返し、真っ直ぐに目を見つめ、高らかに名乗りを上げる。その名は己のものであると、我こそが末娘だと、誇るように胸へ手を添えて。)[終章]
(一体何度、ワイン一つで傷付かなければならないのだろう。こんな形で、贈られたくなどなかった。)[終章]
ふざけないで、人の命を何だと思っているの。お姉様の婚約が決まってさぞお邪魔でしょうね。いいえ、その前からずっとそうだった筈よ。どうして、今更。(これは、父にぶつけるべき怒り。わかっていても、それに従おうとする騎士へ、憎しみを込めて睨みつける。)[終章]
そんな私のため、要らない。(自ら死ぬか、殺されるか突き付けられて、たとえ父王の命だとしても、生きる道を示されようと、いつも優しい彼が別者になってしまったようで、恐ろしかった。)[終章]
……でもね、その力を魔物に向けようと、私に向けることはないって思ってた。エリックさんは、殺そうと思えば、私のこと、殺してしまえるのね。[終章]
ここまでもこのあともエリックからは一言も「あなたを殺す」とは言ってないんですが、そう取られてもおかしくない発言はしていましたし、初対面として他人行儀な態度が恐怖心を煽ってしまったんだなぁと猛省しています。楽しくお腹を痛めてのたうち回っていました。
……考える必要はなくなったわ。(どうして騎士を殺すだとか、殺されるだとか、そんな話をしなければならないのだろう。)私はエリックさんのこと、殺せないよ。エリックさんとは違って。(悲しむ心とは裏腹に、随分と穏やかな声だった。命を差し出されようと未だ恐ろしかったけれど、騎士へと向ける激情が過ぎ去り安堵に微笑んで、剣先を下ろす。怒りも、憎しみも、その矛先は正しく向けるべきだ。)お父様を、ぶっ殺してくる。[終章]
ぶっころ発言には度肝を抜かれましたが、同時に痛快でした。エリックは顔面蒼白だったでしょうが、私はアナスタシア様の危うい決断を応援したかったです。
エリックさんはさ、(おもむろに騎士の名を呼び、見上げれば視線は合おうか。暗く静かな響きと共に、彼の瞳に映し出されよう己が中の空虚を覗き込む。)うまれてきた意味を、考えたことはある?[終章]
お母様には悪いけれど、私の命は私だけのものだから、好きに使うことにしているの。[終章]
今際の時まで双子の行く末を心配していたお母様ですから、アナスタシア様が命の使い方を真剣に考える子に育ってくれて、むしろ喜んでいるかもしれませんよ。
(双子だと知られ、気になったのは最上の定義だった。けれど姉の振りをしながら、忠誠も厚意も想いも期待するなど、理不尽な話だったと声を落とす。自分だけの騎士になるよう求めてしまうのも、もっと狡いことだった。)[終章]
(すべてを差し出してくれるような言葉へ後ろ暗い喜びに笑みを零しながら、突然いなくなれる人なんだな、と悲しむ気持ちもあった。彼は否定するだろうけれど、いつかそうやって、大事だからこそ身を引いたと解釈した乳母のように、黙って消えてしまうのだろうか。別離を仕方がないことだとは、もはや思えなくなってしまっていた。)[終章]
……じゃあ、なんでワインの箱に入れたの?[終章]
スレ立て時に説明くさいかなと省いたのですが、普段使っていない短剣を所持していると警備に怪しまれるんじゃないかと考えてカモフラージュの意味もありました。
ふぅん、エリックさんは、私が他の人と引っ付いてもいいんだ。見たくないだけなんだっけ。独占してくれても、攫って隠してくれても、いいのだけれどね。[終章]
それから後ろのほう…。いいんですか!? 本当に!? そんなこと言っちゃだめですよ、エリックが悪い男だったらどうするんですか…!
……うん、ありがとう。命令を下されたのがエリックさんでよかった。(表情に出したつもりはなかったのに、不安を読み取ってくれたかのようだと笑みは浮かぶ。他の者に処分を託されていたなら問答無用で殺されていただろうと思い至れば、彼を恨めしく思うのもお門違いというもの。)[終章]
(密やかに積もり澱んでいた感情は流れ去って、後に残ったのはかつての問いへの答えだった。)エリックさんは、取るに足らなくないわ! こんな面倒な私に、言葉を尽くしてくれるのはエリックさんくらいよ。たとえこの先長い人生の中でそんな人が現れたとしても、悲しい時も苦しい時も寄り添って、何度も掬い上げようとしてくれたエリックさんじゃないと嫌。(真っ直ぐに目を見据え、きっぱりと、騎士の自己卑下も、他の人との未来も否定する。優しくしたことはないけれど、己が騎士に向ける感情が、彼だからなのは明確だった。)[終章]
私ね、ずっと人目を避けて、お姉様を装って生きてきたの。でもずっと一人きりでいるのも嫌で、春の日に見つけてくれて、中庭を一緒に回ってくれて、元気づけてくれて嬉しかったわ。“半分”って思われるんじゃないかって避けてた時期もあったけれど、駄目なところを見せても蔑まず受け止めてくれて、退屈な毎日だったのに楽しい時間も過ごせた。何度も厚意を踏み躙ってきたのに、エリックさんが伝え続けてくれて、厚意を厚意として、向けられた想いを正しく受け取ることもできたの。今でも下手だし、エリックさん以外からは全然受け取れない、どうしようもない私だけど、エリックさんから受け取れるならそれでいいとすら思ってる。[終章]
私も、エリックさんのこと、嫌いじゃないわ。(肝心の言葉は素直に言えなかったけれど、本意が伝わっていないようであればいくらでも言葉を尽くせる自信があった。騎士から受け取ってきたものは、今までにたくさんあるから。)[終章]
最上は、私だけがいいな。[終章]
時短のために窓を壊してしまうなんて、とっても悪ね。追っ手、かけられてしまうかしら。思いっきりやっていいわよ。(にやりと口角を上げて、嫌がらせに賛同の意を示す。)[終章]
(最上。俯き赤らめた顔を綻ばせて、じわじわと訪れる喜びを噛み締める。)ふふ、どんなエリックさんでも、別にいいや。(最上の立場を求めるのも、どんな彼でもいいのも、もちろんこれまでの彼があってこそのもの。)[終章]
エリックさんも海を見たことがないのね。水たまりなら雨水が溜まった窪みでもいいのに、どうして心惹かれるのかしら。……ねぇ、亡命する準備はばっちりしていたのに、その先は考えていなかったエリックさん。海の見える町で、私と一緒に暮らすってことでいい? 一人じゃ何にもできないお姫様だから、嫌と言われても住み着くけれど。私、洗濯も料理も買い物もしたことがないから、覚悟して頂戴。(確かめるように顔を覗き込んで、自信満々に宣言するのは共に在るための口実。)[終章]
(己の性格の悪さを隠したままで騎士を騙している気もするけれど、いつか、心穏やかに話せる日が来るのだろうか。)[終章]
ふぅん、愛を込めて欲しいのね。気が向いたら呼んであげてもよろしくってよ、リックさん。(敬称を付けてしまえば普段とあまり変わらないものの、親愛を込めるのも呼び捨てにするのも照れくさいから、意地悪く笑んで誤魔化してしまう。)[終章]
(差し出された騎士の手を掴み引っ張り込み、屈んでもらえたのならそっと目蓋に唇を落とそう。)これからよろしくね、私だけのリック。(彼の心が風のように移ろうことなく、いつまでも最上で在り続けられますように。)[終章]
私のどうしようもないところは変わらないと思うけれど、良いところに目を向けるのなら、少しはできそうな気がするの。嫌なことばかりに向けていた目を、楽しい思い出へ向けられたように。[エピローグ]
……私、自分のためにしか生きたくないから、良い母親になれないと思うの。子を成す意味もよくわからないし、エリックさんの最上が変わるのも増えるのも嫌なのだけれど、ずっと二人きりでもいい?(かつて彼へ唆した未来は他人事で、自分とは縁がないものだと思っていた。けれど想いが通じてから時折考えるようになって、彼からは「そんなふうに生きられたなら」と聞いていたというのに、触れずにいたのは狡さゆえ。それでも、己のためにすべてを捨て去ってくれた彼ならば、望んでくれる気がするのは自惚れであろうか。)[エピローグ]
よくよく振り返ればアナスタシア様はまだ17歳ですものね…。ずっと二人きりでもエリックは大歓迎でしょうね。
(広がる金糸に指を通し感触を確かめて、用意していたコームを取り出す。不器用に扱いながら髪を束ねて括ろうとし、失敗を繰り返し時折遊びだすこと数回。いつもより高い位置で一つに結ばれた髪を、満足げに見遣る。正面に回り込み、できあがった髪型を鏡で見せながら、うずうずと訊いてみる。)ねぇねぇ。リックさんが働いている喫茶店、人を募集していたりしない? 掃除とか、皿洗いとか、私でもできそうなの。[エピローグ]
二人揃って働けたら楽しそうでいいですね、嬉しい提案をありがとうございます。