Albert Hortensia Verite
アルバート・オルタンシア・ヴェリテ
年齢
24歳
身長
185cm
イメージカラー
フォーン
サラヴィリーナ
私はあなただけの騎士。
私を振り返ることなどなく、ただあなたの信ずる道を歩いてください。
あなたの歩いた道が、いつかこの国の、民の光となるのだから。
性格備考
ノブレス・オブ・リージュを体現する男――それが、アルバート・H・ヴェリテだ。旧くは建国神話に由来する由緒正しい侯爵家の長子として生まれ、幼い頃から衆目の中貴族の矜持を忘れぬよう厳しく躾けられて育った。王立アカデミーを優秀な成績で卒業、貴族男子としては最も一般的な経路を辿り王国騎士団に入団後も、卓越した剣技で齢二十四にして精鋭の第一部隊長を務める。鍛え抜かれた肉体と整った容姿を持ち、社交パーティに出れば貴族女性たちのお誘いが引きも切らない、今やその一挙手一投足が噂になる男は、生粋の貴族でありながら未だ婚約者も持たない。それが却って女性たちの耳目を集めるのだが、そこには深刻な理由がある。――男は、女性恐怖症だった。貴族の責務としていつかは結婚しなければならないことはわかっている。刻一刻と父からの圧力も強まる状況に、「俺だって……いや、やっぱり結婚なんて無理絶対無理…」「俺なんて…家の役にも立てず……いっそアイリーンが人間に変化してくれれば喜んで結婚するのに…」と、愛馬のアイリーン(♀)にぐちぐちめそめそすることが現在唯一の処世術。幼い頃から何故か動物全般に妙に求愛されるという才能もだが、強く勇ましく優雅な社交用の姿と小心者で悲観的な本心との乖離――これこそが、男の最大の秘密かもしれない。
ある日のこと
b:王室の政略結婚について意見を求められた
(政略結婚?……まあ致し方ないことだろう。他者より与えられるものが多い家に生まれついた以上、自分の責務は貴族ならば皆わかっている。王族ならば尚更、幼少のみぎりよりご覚悟されている筈。――私?勿論、来るべき時が来れば、家のため、国のために妻を迎えることに何も異存はないが。)………ああああ、アイリーン…どうして俺はいつも思ってもいないことをペラペラと…(今日も艶やかな栗毛を櫛で丁寧に梳かしながら、はああ、と大きなため息が零れ落ちる。彼女は慣れた様子で、はいはいまた何か悩んでいるのね、と男を一瞥するのみだ)政略結婚など、誰もが嫌に決まっている。王家の方々もだろうし――俺だって絶対にしたくない(とある部隊長が、王室の末の姫君の縁談が進んでいるらしいぜ、と噂話を持ってきたことが話の発端だ。末の姫君といえば、“半分”の姫。斯様な噂があれど王室の一員に違いなく、ならば政略結婚の縁談が舞い込むのは至って自然の成り行きだ。末の姫君は十七、八になられる頃ではないか。一般的には遅すぎるくらいだろう――未だ婚約者も持たぬ自分はあっさり棚上げだが。)…まあ、気の毒は気の毒だよな。好いた相手と添い遂げたいと願うのは、きっと庶民も貴族も王族も年頃の女性ならば当たり前の感情だろうから(最後に立派なたてがみを丁寧に梳かれたアイリーンは、ひどく満足げに鼻を鳴らした。本日のブラッシングは終わっていいわよ、の合図だ。美しく気位の高い彼女は男の愛馬であり、幾度も死線を共に乗り越えてきた相棒である。男――キュクロス王国宰相ヴェリテ侯爵の長子で、キュクロス王国騎士団第一部隊部隊長アルバート・オルタンシア・ヴェリテは、家柄良く、見目良く、剣技に優れ、大物独身貴族最後の砦ともなれば、女性たちの熱い視線は日光ほどに当たり前に降り注がれるものの、目下のところその素顔を見せる女性は愛馬のみだ。「アイリーン、美味しい飼い葉を持ってくるよ」ととびきりの笑顔で厩舎を出たアルバートは、次の瞬間、思わず腰の剣の柄を握った。「アルバートさま!」興奮したような女性の黄色い声に、ひくっと口の端がひきつる。厳重に警備された騎士団の練習場に併設された厩舎にはとても似つかわしくない、煌びやかで豪奢なドレスを纏った女性の顔には見覚えがある)……ダナン伯爵のご令嬢のリディア嬢、(名を呼ぶや否や、「こちらなら確実にアルバートさまにお会いできるとお聞きして参りましたの」と頬を紅潮させて詰め寄られて、じりっと思わず一歩後退る。…まずい。ちょうど周りに誰もいないじゃないか。お茶会が~、お父さまが~と、矢継ぎ早にその赤い唇から飛び出す言葉の殆どは全く耳に入ってこない。どうこの場を逃げ切ろうか、それで精いっぱいだ。変な冷汗が出てきた。こんな状況、部下に見られたら面目丸潰れだ。何やら言いながら自身に伸ばされた白い腕をさりげなく躱しながら、引き攣った笑顔を浮かべる)…リディア嬢。このような殺伐とした場所、社交界の華と評される貴女のような方には似つかわしくないでしょう。今すぐご邸宅まで送らせましょう(その時、ちょうど良いタイミングで通りかかった一般兵に、彼女を丁重に自宅まで送るように命じると、丁寧に一礼して背を向ける。再び出てきたばかりの厩舎へと引き返す背中に、恨めし気な視線が注がれているとは確認せずともわかったけれど、もうアルバートはそれどころではない。一目散にアイリーンのもとへ駆けつけると、すりすり頬ずりしながら「怖かった…」と呟いた。獲物を狙うように爛々と輝く瞳。真っ赤に塗られた唇。女性らしい肉体を強調するようなドレス。頭がくらくらするような強い香水の香り。――吐きそうだ。思慕を寄せてもらっていることはわかっているけれども、恐怖と嫌悪しか浮かばない)……アイリーン…やはり、俺に女性との結婚など、どう考えても無理だ…(まさか、第一部隊長ともあろう者が、女性恐怖症だなんて。僅かな友人しか知らない秘密。不満げに鼻を鳴らすアイリーンに、早く飼い葉をよこしなさいよと催促されても、アルバートは彼女の匂いが消えるまでそこを動けなかった。)