Amelia Kyklos
アメリア・キュクロス
アメリア・キュクロス


- 年齢
- 17歳
- 身長
- 165cm
- イメージカラー
- オータム・グローリー
- 騎士
- ケヴィン
神出鬼没の末娘、アメリア。冒険譚をこよなく愛し、自らもまた冒険者たらんと定期的に脱走を試みる行動派の「半分」である。知的探求心の強さは折り紙つきで、齢が七を超える頃には城内の抜け道を網羅。従者の配置をも書き記した地図を友として、縦横無尽に王宮を闊歩している。双子の姉とは互いに異なる愛称を用いており、奥ゆかしい深窓の姉リアに代わり、妹エイミーが公務のほとんどを担当。アメリア・キュクロスの印象の多くは表舞台を演じるエイミーのものであるが、時たま入れ替わる恥ずかしがり屋のリアがアメリア・キュクロスという人間を難解にしている。冒険譚の影響か、気を抜くと「そうか」「いいんじゃないか」とやや男勝りな語調がまろび出るが、姉の強い要望もあり敬語を共通言語に設定。眉唾物の古びた魔導書や、禁忌の呪術書を好む好事家で、いわゆる姫君らしい教養に興味がないまま17歳を迎えた。ふたりで一人を演じる歪さも、あらゆる書物で災厄として描かれる双子の不条理にも、特筆すべき感慨は抱いていない。しかし、双子である自分たちにハッピーエンドが訪れないことだけは予感しており、危険を顧みない脱走劇は刹那主義者の一面を滲ませている。
ある日のことb:王室の政略結婚について意見を求められた
(祖たる騎士に問いたい。双ツ首の竜は、まことの悪であったのか。退屈な暗闇から生まれた疑問符を消し去るように、小さく息を吐く。浅く上下した肩を背後の従者が諫めた。)ああ、すみません。動いてしまいましたね。(痩せた指先が金糸を掬う。深く落ち窪んだ瞳と鏡越しに目が合って、彼女へと謝罪のウインクを贈った。ぺしりと軽く肩を叩かれて、思わず笑う。彼女はアメリア・キュクロスの正体を知る数少ない人物であり、アメリア・キュクロスを演出してくれる芸術家兼乳母だ。本日もまた公務に向けて、双子をより等しいものに磨き上げる真っ最中である。その重責を思えば大人しく着せ替え人形に徹すべきところであるが、如何せん退屈だった。再び目蓋を下ろす。思考の海に潜る前に、耳慣れた嗄れ声が届いた。「政略結婚について、姫様は如何お思いで?」不意に、彼女に叱られた日を思い出した。確か、枯れ木の精に似ていると告げたのだ。お気に入りの冒険譚に出てくる、お気に入りの登場人物だと伝えても機嫌を直さなかった可愛い女性だ。藪から棒の話題だって、彼女なりの気遣いに違いない。)末子である私が成せる、最大の公務だと思っていますよ。(教科書通りの回答は、今この場では野暮もいいところ。不興を露にした乳母の表情があまりにも想像通りだったものだから、つい柔い笑声が転がった。)あはは、悪い悪い。冗談だよ。かのアメリア・キュクロスも、おまえの前ではただの小娘だものな。それにしても、政略結婚ね……うーん、特にどうも思わないな。恋というものに興味もないし。……リア?知らんよ。あいつはロマンチストだし、やはり嫌なんじゃないか?(やや投げやりな口ぶりだった。「姫様は時々、リア様を疎まれているのかと思う瞬間があります」と肩を竦める乳母の言葉も尤もで、寒色の瞳は“半分”の噂も相俟って近寄り難いと敬遠されがちだ。)まさか。大好きに決まってる。(しかし、ふたりきりの部屋に響くアルトは親愛に満ちている。何もなくとも微笑むような愛嬌こそ持ち合わせていないけれど、表情は豊かな方である。大好きな枯れ木の精に髪を結われながら、大好きな片割れを想えば口許も綻ぶ。晴れやかな声は、詩でも詠むように。)考えてもみろ。そもそも双子が生きていることも、一人をふたりで演じていることも、どれもこれもが狂気の沙汰だ。いつか別の道を歩む時が必ず来る。(物体の輪郭を溶かす裸眼の世界は、鏡に映るアメリアの境界すら曖昧にする。あれは姉なのか。それとも自分なのか。老婆の指先が完璧なアメリア・キュクロスを演出すれば演出するほど、本当に“ふたりは一人”なのではないかと錯覚する。)なればこそ、私たちは互いの全てを理解し合ってはいけないんだ。全てを理解して融け合ってしまったら、分かたれたときに生きてゆけなくなってしまうからな。(所詮は17歳。ただ与えられた運命に身を委ねるしかないと承知しているから、ささやかな意地だけが悪足掻きだ。無言の乳母から差し出された眼鏡を掛ける。気まずそうな藪蛇の表情が面白くて、エイミーは笑った。)おまえは本当にかわいいな。まあ、せいぜい祈るとしようじゃないか。我々の平穏な日々が、一日でも長く続くことを。
知らない匂い、知らない生き物。驚きの連続ですよ。
……そう怒るな。私も驚きたいのだ。皆が私たちを見て驚くように。