Kevin Arden
ケヴィン・アーデン
年齢
16歳
身長
171cm
イメージカラー
シェイクスピア
アメリア
騎士とは、自らの心に定めた主の名誉のために戦う者。
自分自身をひたすらに律し剣を取るべき者なのです。
けれど姫、貴方を見ていると僕は無性に揺らいでしまう。
曖昧なありようが……手が届かないもどかしさが、そうさせるのでしょうか?
性格備考
幼い頃から憧れに目を輝かせてばかりの少年だったと人は言う。ある時は寝物語として読み聞かせられた建国神話の英雄に、ある時は騎士の中の騎士と誉れ高き父祖の名に。数代前の治世に王の危機を身を挺して守った――そんな勲功から男爵位を賜ったアーデン家の一人息子は、騎士の家の出自に相応しいまっすぐで清廉な心根の持ち主だった。他者の模範となる存在として規律を重んじ、他者を守るための存在として何事にも臆せず屈しない。ほんの少し前に見習いを脱したばかりの若輩であることや、武人らしからぬ甘い容貌から時に爪弾きされることがあっても、胸に刻んだ誓いを貫き通すのが騎士だと固く信じている。ゆえにキュクロス王家や双子のありようを疑ったことすらなく、正しく円環に組み込まれていると言えるが、ここのところ秘すべき“憧れ”がひとつ増えてしまったのは目下頭を悩ませる事柄だ。何せ初めて出席した夜会の折、ほんの僅かに垣間見た末の姫君の姿が脳裏に焼き付いて離れないというのだから、誰かに相談どころか口外なんて出来ようはずもない。芽生えかけた不相応な想いに蓋をしてやり過ごす日々の最中、降って湧いた付き人への抜擢は幸か不幸か。いずれにせよその姫君がどちらかなんて知りもしない少年は、ただ持ち前の一途さで、騎士として完璧であることだけを求め続けている。
ある日のこと
b:王室の政略結婚について意見を求められた
(半分に欠けた月が空高く昇った夜半。王城の片隅にある騎士団の寮舎では、騎士たちが各々の時間を過ごしていた。昼の訓練疲れから早々に寝入る者、それに感心交じりの視線を投げながら酒を嗜む者、狭いベッドの上に数人で膝を突き合わせ噂話や政治の問答に花を咲かせる者。――騎士団の中でもとりわけ新入りや、有体に言えば下位の立場の者があてがわれるこの部屋は良くも悪くも雑然としている。そんな中几帳面に背筋を正し、黙々と剣の手入れを行う少年の姿はどこか浮いていた。戦いを生業とする騎士らしくない幼げな容姿は勿論、騎士団の装備を解いた後だというのにきっちりと着込んだ服装や、きちんと梳かれた黒髪がそういう印象を与えるのかもしれない。結果、早々と同室の面々には遠巻きにされていたが、当の本人は気にも留めず刃こぼれを確認して剣を鞘へと仕舞う。そうして枕元の壁に立てかけようとして、ふと、手が止まったのは噂話をしていた数人の方から気になる単語が聞こえてきたからだった。)……政略結婚…とは、王室の方のですか?(そっと立ち上がって彼らにそう声を掛けると、流石に最初は驚いたらしい。しかし珍しい横やりにあれよあれよと円陣の中に引き込まれ「やれ何番目の王子が婚約者の令嬢と揉めてる」だの「やれ公爵家の誰某が候補として名前が上がってる」だの下町のゴシップにも満たない会話が次々と飛び交う。中でも一番多く話題が上がっていたのはやはり末の姫君についてだった。母の胎内に半分を置いてきた姫。その出自も振る舞いも立場も、何もかもが噂には事欠かない。事実として分かってはいても、ほんの少し胸の奥がざわつくような感覚を覚え、平静を取り戻すために口を開く。)僕はまだ直接お話したことはありませんが……皆さんの仰るような人柄が本当であろうと、あの御方も然るべき相手のもとに嫁がれるのでしょうね。それが姫君の勤めであり、果たすべき役目だというのなら、僕たち騎士に出来ることはただその日までお支えすること。そうして幸せになられることを願うだけなのだと思います。(王室が関わる物事に、一介の騎士如きが意見を言う資格などない。心からそう信じる物言いに、辺りは水を打ったように静まり返る。周囲が二の句を告げずにいるのは驚きか呆れか、少年にとってはどちらでも良かった。だから周囲の騎士たちの代わりに自分自身で言葉を繋げる。窓の向こう、煌々と輝く半月を見据えて、)“半分”であろうとこの国とって尊い、ただ一人の御方であることに変わりはないのですから。(陶然と呟いたその言葉は少年にとって紛うことなき真実であったが、覆い隠された帳の裏の真相を鑑みれば残酷であることをまだ知らない。今はただ、子供じみた憧憬を、澄んだ瞳の奥に湛え続けるばかりだった。)