Lune Cyril de Châtillon
リューヌ・シリル・ド・シャティヨン
年齢
24歳
身長
176cm
イメージカラー
シルバー・グレイ
アルシノエ
世の人王家を蔑ろにせしとも、我らばかりは命を賭して守り抜かん。
……家の教えです。私はただ、その誇りを胸に順うのみ。
ゆえに願うも烏滸がましい身ではありますが、思うばかりは赦されましょうか。
その穢れなき御心が、せめて穢れなきまま在り続ければ良いと。
性格備考
数百年にわたり騎士を輩出し続けてきた、由緒正しきシャティヨン伯爵家の息子。代々剣を握ってきた嫡子達の例に漏れず、リューヌもまたその才に恵まれて生を受けた。己が心身は王室のため、国が行く末の礎とならんことを。初代当主の掲げた家訓のもと王家に忠誠を誓い、物心ついた頃から胸に携え続けた志は折れず揺るがず。キュクロスに伝わる神話もまた当然のごとく、刷り込みがごとく、幼き時分から粛々と教え説かれてきていた。常識として罷り通る風習に、よもや疑問など抱こう筈もなきまま。日々鍛錬と学びを重ねた末、騎士団員として今日日に受ける評は――剣術の腕は非の打ち所なく優秀、人間としては遊び心を知らぬ堅物。品行方正ながら寡黙な日常態度、涼しくも鋭い目許に硬い表情、職務中の真面目な物言いがよりそういった印象を色濃くさせるらしい。実際勤めに当たる時間の他もほぼ鍛錬か読書に充てる辺り、内面もそれらの概評と大凡違わぬものと知れようか。さりとてひとときの休息や人との関わりを厭う訳ではなく、同志や朋友と談笑する折などは口調や面を和らげもする。罪なき人々の心身が不条理に傷つけられたなら、声を荒らげはせずとも当然の憤りを胸に燃やす。築いた人間関係はどれも穏やかに息づき続け、そこに確かな幸いを見出し、皆の平穏無事を護り続けることを誉れとして。ゆくゆくは生涯を通し国に貢献するものと、それが己に定められた使命と、そう信じ切っていた。
ある日のこと
b:王室の政略結婚について意見を求められた
……王室の話か。藪から棒に、何を言い出すかと思えば。(それは偶々、護衛の任務が日中のみに限られていた或る日。天高き陽が宵の星へと役割を譲り、心よき幼子はララバイと共に大人しく眠るであろう時分。夕刻から却って賑わいを増す城下町の一角、身分の隔てなく憩いの場として親しまれる酒場にて。つい先日に予てからの恋人との縁組みが決まった朋友へ、ごく細やかな祝いも兼ねた席での遣り取りだった。「しかし結婚の相手が初めっから、それこそ出逢う前から決められてるってのは如何なものかね」とは、有頂天の頭に祝い酒の力も手伝ってか投げかけられた友の声。問われた当人は冒頭の一言を静かに零したのち、呆れとも一笑ともつかぬ一息の間を置いて口を開く。)王家の直系にあたられる方々からすれば、生を受けた時点で既にご承知のことだろう。婚姻は当人のみのため行うべきものに非ず、国交のため戦争回避のため……ひいては国の未来がため。それが巡り廻って御本人の幸いに繋がるとあらば、拒まれる余地は無きに等しいのではないか。(話題に上る王室は言わずもがな、高貴の身は往々にして義務を伴う。中々に他人事でもない常識乃至教本通りの回答は、模範的と書いて退屈と読まれそうなものだった。ワインの紅が揺れるグラスを傾ければ、隣席の友が「そりゃ尤もだが」から始める講釈。結ばれ子を成すに過程がない、当人同士の意思さえ二の次とは、王族様なら仕方なしとは思えど情緒に欠ける。例えば昔日から愛を通わせたすえ婚姻に至るなど、そういうのが良い。心が伴わぬ結婚なぞ、俺ならまっぴらごめんだ――云々。佳き友は愛すべき理想家であれど、残念ながら実務家ではない。況してや彼自身の幸福に浮かれきっている今は尚更。さしずめ自分はその対極といった処かと、同意ではなく相槌の頷きを送ること幾度目か。「リューヌはどうなんだ」向けられた水の唐突さから、主に“どう”の掛かる処を判じかねて数拍の間。つまるところ結婚や婚姻、そこに繋がる一糸にでもなりそうな浮いた話はないのかと。そんな他愛も脈絡もなき雑話だとは、やや声量を上げた二言三言を付されてから知れること。)お前とて解っているだろう、生憎そういった話には一切縁が無い。父上の意向に添う縁談なら、相手方の意向も含めて聞く耳くらいは以前から持っているつもりだが。それに……如何なる道に進もうと、俺が為すべきことは変わらない。国の未来を担う方々の命を、この身に代えてもお守りするのみ……(淡々と実直に語る声は、末尾のピリオドまで打つ前に呑まれて消えた。成る程これじゃ女っ気なんて欠片もない訳だと、豪放磊落に笑う声に被せられて。その言い分に若干の不本意さは感じつつ、実のところ返す言葉もないものだから微かに笑んで収めてしまう。些細な失敬は気の置けない間柄に免じ、また今は言祝ぎを贈るべき刻だからと大目に見ることとして。ついと持ち上げた銀灰は友の肩越し、透明な窓越しの月影を仰ぎ、緩やかに飲み進めていたグラスを空ける。代わり映えしない昨日と今日、そしてまた重なり往くであろう明日からの未来。揺るぎなき積み重ねを苗床として、息吹く安寧の花が手折られぬよう護り続ける。たとえ傍から見て華や面白味には欠けようとも、その定めこそが生きる意味に相違ない。終わりなき円環が途切れる兆しなど、少なくともこの小夜までには終ぞ見えやしなかったのだから。)