(始まりと終わり。)
(春の終わり、少しずつ気温が高くなりつつある日のこと。剣を携え廊下の床で靴音を奏で、窓から射し込む光に時折影を伸ばしながらも前だけを見据えていた。朝と表現するには少々遅く、では昼かと言われればそれも少し早い。常であれば既に外へと出ている頃合に場内を闊歩する姿はきっと周囲にとっても見慣れないものだろう。――特別な任。聞けば末の姫の付き人になれなどと、)誰が見ても明らかな人選ミスだろうが、目が可笑しくなったのか?目だけじゃなくて頭も開いた方がいいかもしれねェな。(肩眉をつり上げながら真顔でそう宣ったのは記憶に新しい。何かの間違いだろうと冗談半分に流していた話が何一つ偽りの無い真実であったと改めて知らされるのは、件の姫君を前にしてのことだった。暗殺の兆しでもあるのか、単に心配からか、姫君が問題児なのか。頭を垂れながら理由を探し始めて数秒後には放棄する。己は国へと仕える騎士であり、命令に口を挟む権利は無い。余計な詮索をしたところで何が得られると言うのか。気付かれないようそっと深く呼吸すると同時に、疑問は全て流そう。無駄なことを口にせず、必要な事項のみを愛想の欠片も無い低音で紡いだ次の日――良く知りもしない主を探して、靴の先を姫君の部屋の方角へと向けていた。感情の色少ない瞳は、その途中淡く輝く髪色を見付けたところで冷めたまま。ただ、確かに彼女を認知するなり目的地が新たに定まる。)おはようございます。今日はどちらへ?(燃えるような赤を束ねた騎士は、声が届く範囲まで近付けば一度頭を下げて恭しく挨拶を。伏せていた瞳は翠緑を見据え、表情を動かさないまま予定を問うた。噂の姫君、その内容と彼女の行く先が何であれ関係無い。何故なら今の任は彼女につくことだからだ。)
* 2022/10/16 (Sun) 18:57 * No.13
(道を譲るのが遅かった、纏め髪から後れ毛がでていた、紅茶の温度がぬるかった――等々細やかな変化に気付くひとだから、無視の仕様もない大きな変化に衝撃を受けたようだった。監視の目に違いないと激高し、付き人なんて必要ないという懇願めいた直訴を宥めるばかりの父の様子に不信を募らせ――巻き込まれた騎士へ幾ばくかの哀れみを抱いていた。細い身体に抑えきれない激情を募らせたひとを胸に抱いて寝たものだけれど、感情は波及することなくふしぎと胸の内は凪いでいた。予感は、散りばめられている。泣き腫らした顔を見られたくないしかし付け入る隙を与えたくないというひとに代わり、サイコロを振ることなく“外”へ出ることになった。わたしが気に入ったオフホワイトのドレスを纏い、わたしが選んだリボンで髪を結い上げている内に機嫌は少し直ったようではあったけれど。愛犬に留守を託し部屋を出たところで高らかな靴音が響くことに気付けば、それ以上足は進まない。回廊を真っ直ぐに進んでくる騎士の他に人影はなかった。)あら…。用があれば呼ぶと伝えたはずだけれど?わたしの言葉を聞いていなかったのかしら?(ふんわりとなぞった台詞は“記憶”のとおり。指先を自らの顎に添え、何故ここで人と出会うのか分からないという風情で首を傾げた。夕焼けいろの髪色も、身に宿す鮮やかな色彩に反し、おもてが仮面のように見えるのも“記憶”のとおり。ただ、窓から差し込む光の眩しさが“記憶”とは異なる。)……戦うひとね。付き人というには空気が猛々しいわ。どうしてわたしの付き人に?誰かに意地悪されているの?(見据えられて笑みを深める。優雅、と呼ぶには柔和さを欠いた騎士の佇まいは相応しい場所が別にあると指し示すようだった。とはいえ、どうあっても傍に置くしかないのであれば、内も外もよくよく検分してみなければ。)馬に乗って城下へ出掛けて、市井で流行りのお菓子屋さんへ行きたいわ!…と、言ったら叶えてくれるのかしら?
* 2022/10/16 (Sun) 20:12 * No.16
(静謐。そう表現できるであろう空気感。気候とは違い冷えるような環境下で、姫君を見下ろす灰の瞳持つ騎士はその空気を崩さないままでいる。)用が無くとも侍りますよ、付き人ですから。お忘れで?(姫君の行動をなぞるようにして首を僅かに傾け、今此処にいる理由を提示する。不敬にならないよう考えて放った返答ではあったが、セーフラインでいられるかどうか。感情を見せないまま、その反応を窺うように観察の目を向けていた。)仰る通り、戦うことで給金を頂いているもので。今更物腰柔らかな執事になって茶を淹れろと言われたところでどうにもなりませんのでその辺りは勘弁頂ければと。……さあね、私が聞きたいところですがどうにも機密事項だそうで。ところで貴女の付き人役は“意地悪”と言われる程劣悪な環境なのですか?少しは楽ができるかと思いましたが見当違いか。(此度の人事に姫君が関わっているとは思えないけれど、執事に程遠く騎士らしからぬ答えを飄々と紡ぎ上げ果てには試すような問いを差し向けた。とても楽をしようと思っている人間には見えないことだろう、見えてはならない。姫君の翠緑の瞳が苦手だ、そう口にしたのは誰だったか。瞬きの間にそんなことを思いながら、早速の要望に再び時間が止まった心地だ。)………。(翠緑の輝きを見下ろしながら、ゆっくりと過ぎて行く時の中で思考した末に口にする答えは。)万一の落馬を考えて馬には私と乗って頂く。この条件がのめるようでしたらお望みのままに。(付けとは言われたが何かをするなとは言われていない。無垢とも言えるであろう光を持つこの姫君が望むままに、安全だけを最優先に考えれば良いのだろうと静かな声で落とされた条件は姫君へどう届いたか。)今までは侍女を連れて城下へ?(ふと抱いた疑問は厩舎へ歩きながらのものか、窓から光差す長く広いその場所でのものか。末の姫君のことなど何も知らない騎士は、もう少しだけ会話を広げてみようかと。)
* 2022/10/16 (Sun) 21:55 * No.17
…――ふふ、あはは!ええ、そうね。どうぞお好きになさって。(怯むことなく、ぽんと打ち返されたいらえに、娘の空気が変わる。両手で口元を覆ったとて震える肩は誤魔化しが効かないだろう。不遜、とも呼べる揺らぎのなさが付き人へ選ばれた理由だろうか。)きみつじこう……秘密と言われて納得できるの?そのお金は命の重みにつりあっていて?(あらまあ!と大きく目をしばたかせた。一歩距離を詰めて、じっと注がれる双眸を覗き込む。逸らされたとて構わなかった。貴人を見つめるのは不敬だとか、動物は目を逸らすことで服従を示すだとか、気分次第で理由が付くものだから。)……どうかしら。急に付き人がいなくなっても、お父さまに云いつけたりはしないから、楽なお仕事かもしれないわ。(律儀に顔を出さなくても良いのだと言外に含ませる。騎士という身分ではなかったけれど姿を見せなくなった使用人は片手で足りない。その理由もまた様々だろうか。)まあ!もちろんよ!早く行きましょう。わたしも怪我はしたくないわ。(両手をぱちんと打ち鳴らし、いっぱいに喜色を浮かべた。ご機嫌な笑みのまま、両手を差し伸べ、避けられなければ騎士の剣を穿かない方の腕へと懐く。腕を取れなければ、軽やかに回廊を駆けだしただろう。たっぷりとしたドレスの裾が翻る。)いちおうわたしの馬がいるのだけれど、あなたの馬がいいのかしら。(まったく期待していなかった要望が承諾されればこの機を逃してはならぬとばかりに速足で厩舎へと向かう。ブーツの編み上げた紐がふわふわと覗くほどに足取りは軽く、浮足立っていて、)初めてよ!お兄さまはお忍びで出掛けていらしたことがあるようだけれど。(真っ直ぐに厩舎を目指していた娘は、投げられた疑問に振り仰ぐ。その間も、足を止めることはない。)お茶を淹れるつもりはないかもしれないけれど、わたしは紅茶が好きよ。薄くスライスしたオレンジを浮かべて、砂糖の代わりに蜂蜜をスプーン3杯分入れるの。(お礼の代わりと騎士が気づく日が訪れるかは分からないけれど、わたしの好きなものを一つ差し出した。)
* 2022/10/16 (Sun) 22:47 * No.20
(花開くようにして移り変わる空気に、試されていたのだろうかと思ったところで何をするでもなく。年頃の少女らしく肩震わせる姿を、傍にいることを許された騎士はただ静かなままで見下ろしていた。)上が言えないと言うのだからただならぬ理由があるのでしょう、詮索するようなことはしませんよ。…私にとっては命よりも剣の方が重く、剣を持つ過程で偶々金銭が得られる立場にいる。それだけの話です。(頭を振るなりはっきりと否定してからは順序を正すかのように言い換え、注がれる瞳の輝きを覗いた。確かに不思議な色合ではあるが、不快感は覚えないままで。)……では明日は頭痛、明後日は寒気で休みを頂きましょうかね。(末と云えども一国の姫の付き人とはそう急にいなくなるものだろうか。細めた灰色の瞳に疑念を宿しながらも、感情見せない口元は冗談を綺麗に紡ぎ上げた。冗談の次の条件は思ったよりも簡単に承諾を得られれば、触れる手はそのまま好きにして頂くとして。)失礼ながら、最後に乗られたのはいつ頃のお話で?(姫君の馬でも己の馬でも構わないが、情報を望んでは灰の瞳を向けた。子供のようにはしゃぐ姿は世間的に言うのであれば微笑ましいのであろうが、騎士の方は何やら選択肢を違ったかもしれないと胸中穏やかでは無い。二人分の靴の音と彼女の声は、伸びる回廊へと高らかに響く。――やられた。ひくりと引き攣った口元はすぐに何事も無かったかのように元へと戻るだろう。足を止めず、発言を撤回することもせず、外の世界へと期待を向ける姫君の隣を歩こう。)…なら、今日は買い物ついでに社会見学ですね。街で民の生活を間近で見られることで学べるものも多いでしょう。(半ば諦観、半ば自棄でもあるが責は果たすとして。上から咎められた際の言い訳は歩きながら幾つか用意しておこうか。)甘いものがお好き、と。それに合う菓子が城下で見付かれば良いですね。(命令とあれば吝かでは無いが、今のところは範囲外。彼女の茶の好みに合う菓子は一体どのようなものだろうかと考えながら歩けば厩舎が見えて来る頃合だろうか。)
* 2022/10/16 (Sun) 23:58 * No.24
そのひとを信頼しているのね。命よりも?ふしぎなお話だわ。…剣は何か、与えてくれて?(瞳は鋼の色にも似ているだろうか。怜悧な印象だけれど、忌避の色がないことを確かめれば瞬く。末娘の瞳には種も仕掛けもなく、ただただ見る者の心境によって色を変えるように思われる、それだけのこと。)そうね、それがいいと思うわ。そうでなければ明日はかくれんぼ、明後日は鬼ごっこに付き合ってもらいましょうか。(口元は笑みを浮かべたまま。しかし冗談、ではない。もっともわたしであればの話である。明日のわたしが明確な拒否をみせるのか、部屋から出ずに過ごすのかは判じようがない。)いつだったかしら、1週間くらい前?(嘘ではない。問いの主が父や母であれば、ひと月は乗っていないと答えたとしても。)そう、遠くへはいけないけれど、裏の森くらいは走らせられるの。わたしの馬で良いのであれば、そうしましょう。兵舎の方へと行くには、人に会いすぎるもの。(腕をとれば、早く早くと急かしながら、慣れた道筋をいく。娘は早歩きを通り越していたけれど、足取りの差は身長差の所為だろうか。)教師みたいな物言いをするのね。民の生活から、わたしになにを学べというの?あなたはわたしになにを知ってほしい?(それはかつて三人目の歴史教師にわたしが言い放った言葉だった。かつては、それを生かす場所がわたしにあるとでも?と続いた。明確な皮肉も、娘がなぞれば輪郭はぼやけ、空はなぜ青いの?とでも言いだしそうな頑是ないものとなる。)他にも見て回っていいのなら、あなたがよく行く場所が見てみたいわ。あなたはどういうところで遊ぶの?ふふ、お菓子、一緒に探しましょうね。あなたは甘いものはすき?(抗われないのを良いことに、父のものとは違う腕に懐き、あれやこれやと投げかけては顔を覗き込んで。厩舎が目に入れば、腕を開放し一目散に駆けていく。ペチコートが覗いたとして窘めるような―付き人の仕事がどのようなものか把握できないけれど―少なくとも、母がいないので良いだろう。)ロロ!お出かけよ。(グルームへの挨拶はそこそこに、丁度小屋から出ていた青毛の馬に近づいた。毛艶は良く、管囲は太く逞しい。ぴんと立った耳はよく反応を示す。)あ…せっかくだから、お父さまの馬に乗りたい?
* 2022/10/17 (Mon) 21:56 * No.33
……信頼。(復唱する声音に滲んだのは微かな困惑だった。信頼とは対極の無関心だなどとは口にせず、命令にただ従うだけの騎士は「全てを」と簡潔に答えを述べる。剣を手放して生きていくなどと、想像もつきやしない。姫君の付き人などと言う立場も中々に理解はできないが、明日も明後日もこうして愛想の欠片も無いまま声を掛けるのだろう。未だ見慣れない、己よりも随分と背の低い姫君を見ながらそんなことを思った。)…そうですか、であれば姫君の仰せのままに。(行先が定まればされるがままに歩き出す。己のみのペースでは無く、少しゆっくりとはしているがそれでもまだ姫君にとっては速いだろうか――足元で揺れる裾が楽しそうに見えたのは幻覚に違いない。)これでも大人ですから。世界のこと、国のこと、民のこと、紡いできた歴史、培ってきた知識と学ぶことは山ほどあるでしょう。ただ、……何を知って欲しいかと言われれば特に何も。今日目にするものが貴女にとって無価値であると言うのなら、それを否定するつもりはありませんので。……あぁ、でも。(彼女を導く教師では無く、ただの付き人である男は冷めた口調で語っていたが、途中で一呼吸置いた。)結論はともかく“そういうこと”にしておいて頂けると今日外へ姫君を連れ出したことで万一私が咎められた際の言い訳になるので助かるのですが。(取捨選択をするのは個々、全てを委ねながら保身を図りその瞳を姫君へと向けて。世界も国も民も、己の存在より上にはならない。)私が行くような場所は少々刺激が強すぎますので、人気の多い所を中心に回りましょうか。…甘いものはあまり得意ではありませんね。(しれりと素っ気ない回答を口にしながらも、下から覗く瞳を見下ろそう。足元の感触が変わるのを感じた頃、子供のように駆けて行く背があっという間に離れて行く中。「転んで怪我とかされたらたまったもんじゃねェな」と苦い表情で思わず落とした小さな独り言は絶対に誰にも聞こえていない自信があった。ゆったりとした足取りで追い付くまでそう時間は掛からず、馬の毛艶から良く手入れされていることは感じ取れるが。)それはつまり私に死ねと?(勘弁してくれと言いたげな声音は、馬の用意をしながらのもの。姫君では無く馬だけを視界に入れながら、手際良く外出の準備を整えよう。)
* 2022/10/17 (Mon) 22:58 * No.35
ちがう?どのような理由であっても従うのでしょう?信頼や好意がなければできないわ。そのひとに死地に追いやられてしまったかもしれないのよ?それでも良いということでしょう?(淡々と返すひとに滲んだ揺らぎに耳をそばだてる。おかしなことを言っただろうか?価値観が違うことは察せられたから、認識の違いを補足しようと言葉を次ぐ。)あなたは民の暮らしに詳しいの?伯爵家の生まれでしょう?騎士はいろいろなことをお勉強するの?大人だから?(侍女やフットマンたちとは随分趣が異なったけれど、問えば答えがあることを知れば躊躇いはなく、浮かんだ疑問はそのまま口を滑る。年上のひとは娘には何も望まず、否定もしないという。それが肯定のかたち、という訳でないことは分かった。)……わたしにとって、ではなくて、わたしがみんなにとって無価値なの。わたしにとっては、楽しいだけだわ。(情緒不安定、我儘で気まぐれ、熱しやすく冷めやすい、人を人とは思わない末娘の数えきれない噂話の一つくらいは耳にしているはずだというのに、己の不運を嘆くこともせず付き従おうとするのも同じ理由だろう。無価値で、無関心。そうと結論付けたとて、娘の微笑みは変わらない。)心配しなくてもだいじょうぶよ。あなたが首を刎ねられるようなことになってはわたしも寝覚めが悪いもの。あなたの所為にはしないわ。……わたしを外に出すなと言われていなかったのでしょう?(明日になれば制約が課せられるかもしれないと思うものの娘は大枠を楽観的に捉えていた。ちょっとした冒険気分がそう思わせるだけだろうか。楽しいものをたくさん見て帰らなければと使命感はあるけれど。)刺激が強いかどうか見てみないと分からないわ!いっしょにお菓子は食べられないのね…。では、すきな食べ物はなあに?(馬の支度は付き人とグルームに任せ、ただ2人のあとをついて回って好き勝手に言葉を並べていた娘は予想外の返事に目を丸めた。手放しで喜ぶようなことではないにしろ、突っぱねられるものとは。どちらかと言えば厚意の提案であったつもり。)え!?どうして!?なかなか乗る機会がないでしょうから、記念にと思っただけなのに。お父さまの馬はもっと大きくて、力も強いのよ。…あ、もしかして、お父さまのことお嫌い?
* 2022/10/18 (Tue) 01:13 * No.37
少し違いますが、まあそういうことにしておきましょうか。(首を捻り、感情宿すことのない瞳を天井へと向けて。そういった単語からは縁遠い人間であるのだとわざわざ報せる必要もあるまい。)伯爵家の生まれだから、ですよ。領地に民がいますからね、それなりの仕組みは頭に入れさせられましたので。幸いにも兄が優秀な跡取りのようで出番は無さそうですが、まあ知識として無駄では無いでしょう。(自由に人生を謳歌している騎士はさして興味も無さそうな口振りを。仕事中感情に左右されることは少ない灰色は、姫君の言葉に確かに瞠っていた。意外なものを見るような、珍しがるかのような色。勝手、手に負えない、そんな噂を耳に入れていたが為か自身で無価値と唇に乗せる姿に違和感を覚えたからだ。)何故無価値であると?誰かにそう言われましたか。(末であるからか、他の理由か。珍しくも他者へと抱いた興味を音へと乗せ、緩やかに首を傾ける。)付き従え、以外には特に。…首を刎ねられると決まった段階で隣国にでも逃げますがね。(言い逃れなら幾らでもできるだろうが、武力行使となれば話は別だ。物騒な話でありながら冷静な口調はそのままに、晴れやかな空を視界へと。本日、無機質な音を立てる剣の出番は無さそうだ。)姫君に悪い遊びを教えた罪に問われるのは遠慮したいので。とは言え、買い物には付き合えますので菓子はどうぞ侍女や他の騎士とお召し上がり頂ければと。……サンドイッチは良く口にしますね、片手で摂れるものですから。(会話の合間に姫君からは視線を外し、もう一人と二言三言交わしながら手を動かそう。一人ではないが為にそう大した作業では無いが、万一を考えると慎重な方が都合が良い――突拍子も無い発言には流石に視線を奪われざるを得ないが。)一介の騎士がそんな勝手をして許されるもので?…まあ結局自分の馬が一番ですよ、慣れてますから。(軽い調子で記念だなどと口にする姫君に対し、騎士の方は少々遠い目で隣の彼へと視線を注ぐ。其方の方は薄い笑みに留めていた。)さて、行きましょうか。(慣れた手付きで手綱を掴み、鐙へと足を掛ければ手早く跨り視線を落として片手を差し出した。姫君の方はグルームが用意した足場から移れば容易だろうが、此処はお手並み拝見といこう。)
* 2022/10/18 (Tue) 16:07 * No.44
(鮮烈な色彩を身に宿していながら、選ぶ言葉もその口振りも色はなく平坦に纏められている。隙のなさと動じなさが白羽の矢が立った理由だろうか。少なくとも娘の言動に神経を擦り減らし病に伏せることはなさそうだ。何の興味もないものと見当をつけたところ、予想だにせず拾い上げられた。)変わったところが気にかかるのね。わたしに興味があるわけでもないでしょうに。誰かに、…わたしの噂話、一つも耳にしたことはない?わたしが知らないだけで誉めそやされていて?(末娘の悪癖と不吉な出生の物語を照らし合わせれば、無価値とされた方がやさしいだろうか。監視だとわたしは判じていたけれど、事情を知らされていなさすぎる。ただ、知らないのであれば知らないままが良い事柄ではあるけれど。)ね、そうでしょう。…あなたは何処へでも行けるのね。(屋根がないところへ出れば、眩しさに目を細めた。汗ばむような陽気のなか、)味が好き、ではなく、そんな理由…?食べる時間がないほど忙しいの?ここへ追いやられるまでは何をしていらして?(馬の頭を引き寄せ鼻梁に己の頭を寄せてみたり、にらめっこをしてみたり、気安く触れ合っていたけれど、馬から気を逸らせば不意に腕が引っ張られる。顔を向ければパフスリーブを銜えられていた。甘噛みと変わらない、とはいえわたしにはしないというのだから愛馬のなかのヒエラルキーは察するところ。髪を含まれなかっただけ良しとして。)こんどはあなたの馬に会わせてね。名前が書いてあるわけでも鍵がかかっているわけでもないもの。それにわたしが乗るのも、あなたが乗るのもいっしょでしょう?(「シリルも乗せてあげてね。」と再度愛馬に念を押し、いそいそとペティコートを脱ぎ捨てれば少し考えた風に首を傾げた後、グルームに押し付けた。差し出された手にかたちばかり手を重ねて、足場を登れば騎士の体の前に横乗りに座る。座り心地が悪いともぞもぞと身じろぎし、最終的に騎士へ上半身を預けることにした。己の重みに負けないだろうかとちらりと上目に見上げ、次にくるであろう衝撃に備え騎士の上着を掴み、)お夕食前には帰ることと、ひとりでいなくなったわけでないとお父さまに伝えてちょうだいね。――ロロ。(馬上からグルームへと伝言を投げかける。言い終わるや否や言葉の意味を問い返される前に、肋あたりへ検討をつけ二度程踵を押し付けた。途端、速足に馬は駆けだしていく。)
* 2022/10/18 (Tue) 21:39 * No.51
(いつぞや、鍛錬上の片隅で掛けられた声が頭の中へと響き渡る。口にしてはならない噂、冗談だと流せなかったあの話は今でも記憶の片隅に。)失礼ながらマイナスな話が多いかと。それが無価値であることへ結びつくかどうかは別の話だとは思いますが。(姫君への興味の有無はさらりと流し、周囲に散らばる事実だけを集めて静かに告げる。偽りを紡ぐことはせず、落ち着いた色の瞳が陽光の下で輝く髪を映して。「地位も名も、全て棄てれば誰でも自由になれますよ。」と抑揚のない低音はまるで囚われだとでも言いたそうな姫君へ贈る。貴女も、と直接的な表現をしないのは立場を弁えてのことであった。)時間が無いと言うよりかは食のみに集中する習慣があまり無いと言った方が正しいかと。…先日までは小隊を率いておりました。(それなりの功績を挙げていたであろう、魔法よりも剣技に優れたアインスグレイ小隊は今では別の名へと転じている。頭が挿げ替えられれば空気感から仕事振りまで変わるもので、彼らが今どうしているかの情報は得ていないし最早興味も失せている。度々外へ赴き魔物を討伐していた日々の代わりに今目の前にあるのは、馬と戯れる姫君の姿だった。薄く吐き出した息は溜息とは少々違ったもの。)お望みのままに。ただし私の馬が無礼を働いても広いお心でお許し頂ければと。(主とは違い落ち着いた気性であるとは言い難い馬のことを思い出しながら、眉を顰めて先手を打つとしよう。馬上にて二人無事に揃えば何やら落ち着かないらしい姫君を確りと支え、随分と高くなった視点からもう一人を見下ろしては目線のみで合図を。走り始めた馬はどうやら優秀な様子で、一定の速度を保ち見慣れた景色を後ろへと流し前へ前へと。道中、先程口にした万が一が無い様努めている間にも城は遠ざかり、門を潜れば騎士の姿は消え、代わりに少しずつ城下の賑わいが近付く。手綱を引き城下の片隅、衛兵が管理する小屋にて馬を預かってもらう心算。事が無事済めば地に足を着け歩き出すことが叶うだろう。)因みにその流行りの菓子屋とはどの辺りの位置でしょう。目的の店が明確であるのなら教えて頂ければと。(彼女の歩幅に合わせることは難しくとも、歩く速度を遅めるぐらいは可能だった。陽光に赤を晒しながら、民の声で賑わう中央広場へと足の先は向いていた。)
* 2022/10/19 (Wed) 22:21 * No.62
(あっという間に知らない景色へと変わっていく。緩やかな傾斜の曲線を描く一本道。その先には建物がぎゅうぎゅうと詰まった町の様子がみえた。風を切る感覚があれども現実感がない。馬の息遣いも、伝わる振動も、支えるよう回された腕も、己の心臓の鼓動も、なにもかもが新鮮で、鮮烈で、内側はいっぱいになっている。内門が目視できるようになった頃、馬はやがて減速した。)ロロに優しくしてくれて、ありがとう。(熱に浮かされたようにぼんやりとしていた娘は遠ざかる体温に我に返った。先に馬から降り立ったひとに、馬上から両手を伸ばして降ろしてほしいと催促を。己と同じだけ箱入りの馬を労ってやれば、馬も同じように興奮冷めやらぬといった様子で前足を鳴らす。鼻先を強引に押し付けてくるのを撫でながら額をよせた。少し、お互いが落ち着いただろうか。そんな様子を訝し気に見ていた衛兵と目が合えばにっこりと微笑みを返す。末娘の噂話は数あれども、形を知るものは多くない。父から連絡が来ていない証左となれば、笑みは深まるばかり。騎士に手続きを任せ、駐屯地を出ればすぐそばで人々の生活が息づいていて、)人がいっぱい。空気がちがう。ちゃんと記録できるかしら!(逸る胸に両手をあて、大きく息を吸い込んだ。石鹸、煙、焼きたてのパン、泥や埃、香水、複雑なにおいがした。ぐるりと四方へ身体ごと目を向ける。ベンチに腰掛け、兵と喋っている女性は町に住まう人だろう。ブラウスにスカート、腰に巻かれたエプロン姿は見慣れない。気付けば、世間知らずは己の見目を調節することにする。自身にかけるものではなく周囲の認識を歪めるもの。己の名前と容を知る騎士には干渉しないものであるけれど、何かしらの気配は伝わっただろうか。)隊の方々へもお土産を買っていく?あなたが美味しいと感じるもの見つけましょう!時間はたくさん!…はないけれど。(規則的に敷き詰められた石畳を数え、空の青さを確かめ、はめ込まれた窓を目にすれば覗き込んで、花から花へと飛び交う蝶のような不確かな足取り。様々な人のなかで、太陽のような赤い色を目印に、騎士のもとへ留まるのは繋がる会話があるため、)あら、言ったでしょう?城下へ来るのはじめてよ。流行りはもちろん、どんなお菓子屋さんがあるのかも知らないわ。わたしの望みのままに、と言ったのだからあなたが案内してくれなくては。(当然でしょう?といわんばかりにぴょんぴょんと飛び跳ね主張する。そのかたわらを母親の手を引きながら子どもが駆けていく。中央広場とやらで楽しそうなことが起きているらしいと文脈から察するのは早かった。人波に飛び込もうと駆け出して、)
* 2022/10/20 (Thu) 14:52 * No.70
(見慣れた景色に新鮮さも何も感じはしないまま、感謝の言葉に静かに首を横へと振ろう。伸ばされた両手に応えるようにしたのなら、姫君の両足が重力に従いきちんと地へと着くよう導いて。興奮冷めやらぬ一人と一頭へと向けられる視線を妨げるべく態と衛兵の注意を引いた。何か言いたげな空気を黙殺した先、陽光の下で軽やかに声弾ませ踊るようにはしゃぐ姫君の後をついて歩こう。あまりにも鮮明な温度差は最早気にもならない。些か目立ちはするが顔が割れていることも無いだろう、貴族の女性と言う事にでもすればいい。淡白な瞳はそのままに、少々気を張り巡らせていた。平穏の文字相応しい城下ではあるが、街の者全てが清いわけでは無いと男は知っている。)私の為ではなくどうぞご自分の為に時間を使って頂ければと。貴女が思っている以上に広いですよ、城下は。その分店も多い。(諭すような低音は子供がはしゃぐ声に紛れて。裾揺らめかせて駆けて行く少年少女らを振り返ることはせず、擦れ違う人へと灰の瞳を向ける機会は終ぞ無いまま。)…私に菓子屋を案内しろと仰る方は貴女が最初で最後でしょうね。(困惑と呆れが綯交ぜになったような声は、あまりにも不似合いだと言いたげに。少しだけ伏せた瞳をすぐに持ち上げるも、視界の片隅で揺れるお上品な裾がふわりとフェードアウトしていった。追いかけるように持ち上げた瞳が捉えた華奢な背中を呼び止めるべく、唇を割ったまでは良かったのだが。)……っ、(開いた口から声は出ず、代わりに足を動かそう。姫様、とは呼べない。かと言って名前を口にするのも如何なものか。困惑の果てに指先で額に触れ、眉を顰めながら小さく零した舌打ちは広場の賑やかさに掻き消えただろう。それでも踵は城下の地を叩き音奏で、コンパスの差からすぐに追い付くなり透明で真っ直ぐな姫君の傍へと控えよう。)勝手は困りますね。…それからもう一つ。外での呼び方を決めておいて頂けると此方としては非常に助かりますのでお願いしても?(老若男女問わず賑わう中央広場、その輪の中心には大道芸人。複数のピンは絶えず宙を舞い、両手を経てその位置を変えていく。隣では音楽奏でる人の姿があることから複数名で動いているのだろうと察して。沸き立つ拍手に何の反応も示さぬまま、隣の姫君へと視線を注いだ。)
* 2022/10/20 (Thu) 23:35 * No.76
(軒先にぶら下がる看板を眺めるために立ち止まり、葉巻を燻らせる老紳士に注意を惹かれ路地を覗き込む娘が、馬車で通り過ぎていく着飾った夫婦よりも身分が高いとは過行く人は思いも寄らないだろう。注視すれば服には繊細な刺繍が施されていることや、耳や指を飾るものがガラスでなく宝石であることは分かっただろうけれど。騎士の身なりとて馬を預けた衛兵たちとは比べ物にならないに違いない。お忍びと呼ぶには堂々とし過ぎているだろうか。)わたしはここまで来られただけでじゅうぶん楽しくて、特別だもの。そうね、大きいもの、広いのでしょうね!模型でしか知らなかったからふしぎな気持ち。ぜんぶは、別にいいの。(あちこちへと気が逸れるために娘は気付かなかったけれど、騎士との会話が途切れることはない。子供たちの甲高い笑い声にかき消されることなく、低い声音がなめらかに耳へ届く。それを不思議と思わないまま、)あら、あなたがよく行く場所には連れていってくれないのでしょう?それにね、あなたが案内出来ないのであれば、あの女性に声をかけるけれど…。(指差したのは入口を箒で穿き清めるメイド服の女性。思いついたまま行動に移さないのは、安易に住人たちと関わってはいけないだろう程度の分別を働かせたつもり。現地案内人を雇うことに娘は抵抗がない。彼女なりに騎士の立場に歩み寄った結果―と云うのは傲慢が過ぎるだろうか。)勝手…?いけないことしたかしら?(人の輪に加わって周囲に合わせて手拍子を取りながら、騎士の窘める声色に首を傾げる。洗練された、とは言い難いけれど、軽妙な音楽に心弾む気持ちは分かる気がした。色とりどりのピンが宙を舞う度に、歓声があがる。魔法、ではないのだろう。)あのひとたちはお土産には出来ないわね…。練習したらわたしもできるようになるかしら。あら、わたしの名前を知らなかったの…?レティーシャよ!あ、町では縁起がわるいと言われているのかしら…。そうね、ロロやゼゼとでも呼ぶ…?(拍手やら口笛やらで声がかき消されそうになる。あまり大声で主張することでもないだろうと騎士に少し屈むよう身振りで示し、口元に両手を立てたならつま先立ちで内緒ごとをささやいた。代替えに提示したのは愛馬と愛犬の名前。)
* 2022/10/21 (Fri) 19:39 * No.88
(朗らかな陽光を受け輝く姫君はとても生き生きとして見える。民が日々当然のように過ごすその場所を、新鮮だと興味深そうに瞳輝かせる人はそういないに違い無く。騎士と呼ぶには些か無愛想が過ぎる赤色の騎士は、受けた視線へと返すように鋭い視線を差し向ける。擦違う女性、片隅で売り子をしている子供、手綱握る御者。誰も彼もが逃げるようにすと視線を逸らすも、胸中に何の感情も抱かずに。)この国に住む人間でそんなことを口にする人間はいませんよ、あまり不用意な発言はなさらないでください。(嗜める口調は呆れを孕んで、街中の喧騒へとその声が綺麗に消えてしまうことを望んだ。)………脅しですか、高貴な方がされることとは思えませんね。(正しく理解しながら、メイド服を纏い職務へと励む姿を映し込んで。街の人間ですら危ういと言うのに、ある種物の価値を理解しているメイドに声を掛けようとは。瞳を伏せつつ竦めた肩と下がった眉及び口角、それらが記すのは記憶にある限りでは上げたことの無い白旗だった。)突然走り始めたでしょう、こんなところで撒かれては首が飛びます。……撒かれやしませんが。(矛盾。複雑そうな表情で行動を嗜めた後は、見世物の邪魔とならないよう口を噤んだ。元から有る才か、努力して得た賜物か。)人身売買は頂けませんね。…庭師のハロルドがああいった芸が得意と聞いたことがありますが、事実なら弟子入りでもしてみては?(空へと映えるピンを見遣る視線はそのままに、お望み通り少し身を屈めるも物騒な発言に口元をひくりとさせて、伝わらない意図に小さな溜息。)城下で姫君の名を呼び歩く騎士なんて自己紹介しているようなものでしょう、城下とは言え治安が完璧な訳ではありません。…とは言え、馬等も如何なものかと。(忠実でありながら文句が多い騎士は、それでも姫君へと付き従う。芸を見た後は大通りを歩き、昔からある箱入りクッキーが評判の小さな焼菓子屋から、色とりどりマカロンやケーキと言った物をショーケースへと並べる大きな規模の菓子屋まで複数を渡り歩くだろう。パン屋、本屋、髪留めを始めとする雑貨屋まで、城下の治安を司る兵士であった騎士はその地図に詳しい。治安の安定した所を巡り、時には顔見知りに声を掛けられたりしながら、非日常な一日はあっという間に終わりを告げるだろう。姫君が満足のいく物を手にできたのか、答えは未だ。)
* 2022/10/25 (Tue) 17:35 * No.99
では、みんなはどんなお話をするの?(周囲に馴染もうという理由ではなく好奇心から、町を知るひとへと尋ねる。耳を澄ましてみたものの、人の多さに判然としなかった。流行りの小説も、夕食の献立も、新しく出来た小売店も聞き慣れないために呪文のようにしか聞こえない。それに皆、随分と早口で舌が絡まないのが不思議だった。)高、貴……そうね、お兄さまであれば問うことはなかったでしょう。けれど、わたしはどちらでも構わないもの。(王家の末端に引っかかる娘は訛りのない言葉で付け足した。多くいる王の子供たちのなかでも異端である自覚はある。)誰かと一緒にいるってむずかしいのね。………そうだわ!迷子になってしまったらロロのところで待っていてちょうだい。迎えにいってあげるから、心配しなくてもだいじょうぶよ。(きちんと帰らなければならないから、娘も付き人を撒こうという発想はない。それに、せっかく楽しい時間を過ごせても、終わりに騎士の首がなくなってしまっては楽しい気持ちも萎んでしまう。一小節ほど真面目な顔つきで沈黙した娘は閃いたとばかりに破顔した。方角すら分からない立場で、揃えた指先を胸に当てて自信たっぷりに告げる。)庭師のハロルド?わたしの知らない名ね。まあ!庭師なのに?あなた、物知りだわ。(王城の仕掛けや抜け道には詳しいものの、仕えるひとびとの顔ぶれはいまひとつ思い浮かばなかった。侍女に訊いてみようと考える傍から、別なことに気を取られて、)わたしを呼ぶのであればそう変わらないと思うけれど、あなたはいろいろと気になってしまうのね。ううん…知らない名で呼ばれても気付かないかもしれないし……あ、つかまってあげるわ!(これも名案が閃いたとばかりに顔を輝かせて手を差し伸べた。今、繋がれずとも「ねえ、あれはなに?」と案内役の袖を引っ張るのだから結果は変わらないだろうか。菓子の甘いかおりに誘われて、ディスプレイの美しさに目を丸め、頬を染めて高揚を露わにしていた娘も、土産物を選ぶときは真剣な面持ちで口を噤んだ。硬貨の持ち合わせがなく、指輪で賄おうとするのは余談として。太陽が傾き、燃えるような赤色に町が包まれた頃、ささやかな冒険譚はピリオドを打った。単なる記録に過ぎずとも、ピンク色のリボンがかけられた包みと嬉しい気持ちを胸に抱える娘には、はじまりの兆しでもあっただろうか。)
* 2022/10/27 (Thu) 15:09 * No.103