(コッペリアの見る夢。)
(延べ百名を動員し、十日を賭して誂えられた宮中晩餐会。王室の威信をかけた最高位の盛宴は、国内諸侯らとの親睦を目的としたものだ。半分の姫とは縁遠いはずの晴れ舞台で、アメリアは主催者の席に着いていた。)ケヴィン。私は飽きました。(絢爛豪華なボールルームを見つめたまま、背後の騎士へと声をかける。赤絨毯と揃いのドレスをコルセットとパニエで整え、白銀のティアラを冠したアメリア・キュクロスは、忠実に職務を果たしていた。たった今、賓客が途絶えるまでは。)そもそも、風邪を召された兄上が悪い。晩餐会を間近に控えておきながら、猪狩りで雨に打たれたのですよ。星を読めば天候くらい分かるでしょうに。(ティアラにあしらわれた紅水晶もくすみかねない悪態の種は、そう遠くない過日に遡る。いよいよ秋も深まり、夜寒を覚える今日この頃。狩りを愛する長兄の不注意は、如何せん時機が悪かった。王冠に程近い兄らは多忙を極め、頼みの姫らは秋冷えで長患い。弱り目に祟り目で半分の姫に白羽の矢が立ったらしいが、当の双子にしてみれば迷惑極まりなかった。公務に関わる一切は妹が引き受けているにも関わらず、夜討ち朝駆けの打ち合わせはアメリアの記憶を分かつに至る。事あるごとに騎士の名を呼ぶ妹に比べ、気恥ずかしそうに騎士と距離を置く姉がしどろもどろに議する姿は、双子の秘密を知らない彼を驚かせたかもしれない。いずれにせよ、未完成の記憶を抱えたまま執り行われた晩餐会は、これといった綻びもなく進んでいた。)星といえば、つるぎ座流星群を見たことはありますか?錦秋にしか見ることのできない、あの流星群です。どこぞの公爵によれば、今日明日の可能性が高いそうですよ。(赤い爪紅が、純白のテーブルクロスに剣を描く。あくまで身体は諸侯らが座すダイニングテーブルへと向けたまま、浅く振り返った。騎士の歩み寄りがなければ紫水晶は臨めないだろうから、その心配りを祈るのみだ。)あとで一緒に見に行きませんか?たとえ待ちぼうけに終わったとしても、きみと夜空を眺める方がよっぽど楽しい。(平生よりも長い睫が期待に上向く。よそ行きの微笑みとはまるで異なる、戯れの光を宿らせた笑みは彼だけのものだ。ささやかな休息のひとときに甘えていた。)
* 2022/10/22 (Sat) 00:55 * No.1
(日毎に冷えゆく外の空気からはほど遠く、奇妙な熱気すら孕む晩餐会の夜。文字通り国家運営の中枢とも言えるその場所に、ひとりのうら若き少年騎士が居合わせたことは、異例中の異例といえる出来事であっただろう。出会いと誓いを重ねた日からひと月あまり。冒険に公務にと呼び出されれば馳せ参じ、そうでなくても鍛錬の合間に頻繁な目通りを願ってはいたが、姫に近しい者はともかく、対外的に従者の存在が知れ渡っていたとは言い難い。城下から離れて暮らす諸侯などは特に顕著で、中にはあからさまに好奇の視線を向ける者もあったが、重責を立派に務めあげている主君を前に恥を晒すわけにはいかないと。身を引き締める思いで金糸を見守っていた。)そう仰らないでください、姫。面白おかしいようでは公務にはなりませんよ。(途切れた客足の合間、呼ばう一声が身も蓋もないから、思わず苦い笑みが零れそうになるのを抑えて真面目に答える。鏡の如く磨かれた床を一歩ずつ踏みしめたなら、靴音を姫君の斜め後ろで止めた。)空模様は気まぐれ、狩りだって社交の側面があるのですから、殿下を責めても仕方がないのではありませんか?……と申しますか、もしや姫は星をお読みになられる?(王室に数多いる王子王女を跳び越え、末子たる彼女に降って湧いた大役。あまりにも唐突だったそれに慌てたのは少年も同じで、混乱の渦中では入れ替わった蒼に気を留める余裕などどこにもなかった。むしろ日頃物怖じしない姫が控えめに困り果てている様子を見ては、自分がついているから大丈夫だと胸を張ってしまい、結果この通り控えることに相成った次第。別にそれが不服というわけではないが、悪態に関しては宥める調子で、赤で着飾った佳人の顔を覗き込む。)つるぎ座の、流星群。いいえ……見たことはありませんね。(冒険をこよなく愛する姫君の好奇心は、どうやら夜空の果てにも向かっているらしい。ついさっきまで淑女然として浮かべていたのとは異なる笑みを見れば、紫水晶が嬉し気に和らぐ。)ありがたいお言葉です。では、星見はのちのご褒美として、今しばらく励まないといけませんね。楽しみな時間は、長い方が格別ですから。(もっとも最終的には責務をまっとうさせる方向に帰結するあたり、遊び心というものは致命的に足りていない。それでも誰かがひとときの憩いを邪魔せぬ限り、傍らで退屈しのぎの戯れに付き合おうとするだろう。)
* 2022/10/22 (Sat) 21:24 * No.14
(未成年の王族に与えられる公務など高が知れている。まして悪評だらけの末子となれば僻地の視察がほとんどで、ご立派な上座を用意されたことなど一度もなかった。内々の夜会とは比べものにならない大役に固唾を呑みながらも、すぐそこにある紫水晶に恥じぬ振る舞いをと背筋を正していたのだから、よく似た主従である。)面白おかしい公務、素晴らしいではないですか。私は面白おかしい公務を所望します。何か思い浮かぶものは?(淡白なアルトがねだる無理難題は、拗ねた子どもの癇癪と同義だ。友人らしい苦言を歓迎する一方で、正しさは時として刃となる。大仰に肩を竦めた。)いけませんね、ケヴィン。また正論ですよ。(さも悪事を注意するような口ぶりで、正しさを否定する。何しろ職務に飽いた不心得者だった。慎ましやかな靴音の訪れにはあっさりと気を良くして、ご機嫌な半円を口許に描く。)星読みは冒険者の嗜みですからね。今度きみの運勢も占ってみますか?(物は言いようだ。その実、双子の行く末を知りたがった幼心の残滓であり、特別に好んでいるわけでもない。ふたりの生まれを凶星と導いた占星術など、いっそ火にくべたいくらいだった。それでも、気弱な姉を励ますには誂え向きの手段でもあったから、頻りに偽りの幸運を告げていた。そんな姉も近頃は随分と饒舌で、二言目にはかの騎士を称賛している。後方支援を名乗り出た彼を見るや、頼りがいのある騎士殿と印象を一新したらしい。華麗な手のひら返しに呆れながらも、愛しい片割れと宝物を共有できる幸福に蒼を浸していた。)私も見たことがないのです。伝承によれば、かの流星群を見た者は祝福を授かるそうですよ。楽しみですね。(和らいだ紫水晶の美しいこと。諸侯らから向けられる品定めの目は息継ぎすら許されないものだったから、その柔らかな色に安堵した。しかし、それも束の間。意図的に空白を挟んでから、不満たっぷりの口唇を開く。)アーデン男爵は後継に恵まれましたね。きみのように実直な騎士は、大陸広しといえどもそうはいないでしょう。せっかくですし、男爵をお呼びしますか?ともに木の実を探し、栗鼠を追いかけた仲だと教えてさしあげねば。(くいと顎先で示した一人の男性。騎士に登用されるや否や、半分の姫の付き人に任ぜられた不遇の息子を、父たる男爵は如何様に捉えたのだろう。いっそ謝罪したい衝動に駆られる中、いたずらに彼を呼びつけるなど言語道断である。だから、これはうら若き少年の誠心を信じた戯れ。忍び寄る不和など知りもせず、紫水晶を試すように微笑んだ。)
* 2022/10/23 (Sun) 10:40 * No.22
(護衛のための警戒を怠っていないとはいえ、ただ控えているだけでも負担を感じてしまうのだ。姫君の心労を思えばこの場に出すこと自体抵抗があったのだが、始まってしまった以上は何事もなく終わるのを祈るのみ。難題には真剣に考え込んで。)折を見てどなたかと踊られますか?体を動かしていれば、時間の経過も多少は早くなるかと。あるいは……あちらにいらっしゃる強面の紳士が何を考えているか予想してみますか?人参は嫌いだなとか、愛娘への土産に悩んでいるだとか、案外お可愛らしいことかもしれませんよ。(長大なテーブルで埋め尽くされたボールルームで踊るわけにはいかないが、確か別室にダンスフロアが設けられていたはずだ。日頃遠巻きにされがちな末の姫とはいえ、今宵は主催なのだから相手には困らないだろうと提案して。ついでに付け足したもう一案は、以前同期の騎士が話していた暇つぶしの方法。とはいえ誰かに聞きとがめられれば失礼にあたると、微かに身を屈めてはいっそう近づいた蒼の耳元へと囁く。)それは……、いえ、出過ぎたことを申しました。どうかご容赦を。(正論を嗜める口振りには一瞬躊躇いを見せたものの、結局は素直に頷いて頭を下げる。末姫と兄姉たちの間に埋められない溝があることは知っているが、そこに自ら油を注ぐような真似はしないでほしい。だがこれは、血を分けたきょうだいを持たない身の上の勝手。生まれながらの理不尽など知らない、幸せ者の意見だと承知している。)占術の心得はないので興味はあります。でも僕の幸運は、姫君の従者に任じられた時点で使い切ってしまったので、わざわざ占っていただく必要などないのかもしれません。(宮廷には星読みを専門とする魔術師もいるはずではと浮かんだ疑問は、冒険者の嗜みという一言で至極あっさり腑に落ちた。言葉の裏側にある重みなんて気づきもしない。澄み切った蒼の一端にすら触れられない。それでも紫水晶は淡く微笑む。つるぎ座というからには、得られる祝福は大きそうだ――なんて呑気に考えていられたのは、その時点までだったけれど。)そっ、それだけはおやめください!(つい、我を忘れて大きく声が跳ねた。少年は比較的おそくに出来た子どもで、息子の入団と前後して騎士を辞し領地へ戻った父には事の次第を手紙でしか知らせていない。当然ながら友人になったなどと暴露されれば滾々と騎士の心構えを説かれるのが目に見えているので、胃に穴が開くどころの話ではないと。動転のせいで周囲のざわめきに気づくのが遅れた。使用人なり諸侯なりが何事かと駆けつけるのも、時間の問題かもしれない。)
* 2022/10/23 (Sun) 14:56 * No.26
(誠実な沈黙だけで、もう十二分に救われていた。よもや実直な騎士の遊び心を垣間見れるなど、夢にも思っていなかったのだ。)……人参。(耳打ちされるがまま、強面のロマンス・グレーを見遣る。すっかり面食らった蒼は、話題の紳士を映しているようで映していない。何せ「人参が嫌い」がリフレインしていた。大きく深呼吸する。内緒話のような距離も相俟って、笑い出してしまいそうだった。)人参が嫌い、ね。かわいい騎士ですね、きみは。いや、それにしても素晴らしい提案です。右から順に予想していきましょう。きみもやるのですよ。(スリルを楽しんでこその冒険者である。旅は道連れ、しっかりと騎士を巻き込むことも忘れずに。――丸い首肯を見つめながら、ぼんやりと思う。きっと少年の心はひどく美しいのだ。彼が懐く紫水晶のように。清廉潔白であれば、正しさは刃になどなりはしないのだから。薄氷の上に成り立つ生を告げたとして、正しい彼は失望するのだろうか。それとも怒りに震えるのだろうか。いずれにせよ、淡く微笑んでくれる紫水晶など二度と臨めなくなるに違いない。だからこそ、その輝きを切り取るように瞬いて、大切に仕舞い込む。いつ終わりが来てもいいように。)きみも酔狂な御仁ですよね。半分の姫の従者など、嘆いて然るべきでしょうに。でも、きみのおかげでここ最近は楽しいことばかりです。友人のいる冒険というものは、かくも格別なのですね。(たとえ美辞麗句の一節であれ、甘美な酔夢に溺れていた。だから、つい境界線を見誤ったのだ。由緒正しき騎士の家、アーデン男爵の嫡男。それがアメリアの知る彼の全てで、父子の絆のかたちなど見当もつかなかった。強い語気にびくりと肩が跳ねる。決して悲観的な女ではない。それでも生まれながらの劣等は、耳慣れた断り文句を想起した。半分の姫と遊んではいけません。多くのきょうだいたちにそう言い聞かせる侍女の声を覚えている。)……すみません、戯れが過ぎました。おまえたち、はがね座のロゼを客人に。非礼を詫びておいてください。(努めて平静を装ったけれど、アルトはすこし揺らいでいたかもしれない。馳せ参じた使用人たちへ粛々と指令を下し、思い上がりを恥じていた最中。追い討ちは突然だった。)――…座興?(使用人曰く、今宵は末姫の座興があるらしい。それもグランドハープの。後悔で錆び付いた頭では、ハープが得意な姉のことも、世間話に花を咲かせた末の催しであることも、何ひとつ手繰り寄せられない。浅く息を食む。分かることとすれば、妹が得意なのはフルートであること。それだけだった。)
* 2022/10/23 (Sun) 21:38 * No.31
……一応言っておきますが、僕が嫌いなのではありませんよ?(退屈に飽いた姫君につかの間の驚きを齎せたなら幸いではあるけれど、その言い回しは何か誤解していないかとの懸念に一段声のトーンが落ちる。かわいいのは自分ではない。そう口に出す代わりにじっとり半眼気味の双眸を向け、示された方向に座る客人たちを一瞥するなり畏れ多さに声を詰まらせた。あれは大臣をはじめとする公爵クラスの御歴々ではないか――なんて、先刻まで挨拶を受けていた本人に確認するまでもないだろう。)姫は戯れにかけては本当に容赦がないですね。その原動力はどこから来ているのか、不思議ですらあります。(提案したのは己で、傍らを望んだのも己。即ち乗りかかった船だ。どれだけ冷や冷やした心地を持て余そうと無謀な冒険についていくことを止めるつもりはないが、仲間なのだから呆れのひとつを零すことぐらいは許してほしい。)…いいえ、姫は半分なのではありません。過分なのです。ただの従者相手にそのようにおっしゃっては、幸福が有り余る。仮に嘆くことなどあったとしても、消し飛んでしまうではないですか。(酔狂。実際そうなのかもしれない。彼女の些細な言動ひとつで心はおおいに動くし、顔だって簡単に熱くなる。とても平静な状態とは言い難い。醒ます者のいない夢は作り物に似てうつくしいままで、だからこそ手を伸ばせば壊れてしまいそうな恐ろしさもあった。そうして踏み出せなかった一歩が、またひとつ血を流させたとしても、紫水晶の刀身は穢れを知らないまま。ただ周囲の状況を漸く理解して硬く拳を握りしめる。従者の非礼は主の非礼。これでは彼女の顔に泥を塗ったも同然だと俯き加減に悔いていれば、微かに息を飲む音が鼓膜を揺らして顔を上げた。)――…申し遅れましたがその件について、姫君にひとつご報告が。(反芻が疑問符を伴ったことに、違和を覚えなかったわけではない。しかし出会った当初に心変わりすると聞いていた手前、根が素直である少年はそういうものだと受け止めた。それよりも問題は、先ほどから彼女の様子が心なしかおかしいということ。)実は運搬に際して何本か弦が切れてしまい、奏者に具合を確認してもらいたいと楽団の者が申しておりました。もしかしたら、演奏する楽器自体を変えねばならないかもしれない、とも。(重要な公務の最中ではあるが、優先するのは主君の心身の安寧だ。ここは一旦離席するべきとの判断で必死に偽りの言葉を連ねる。)祝宴の最中ではありますが一度お越しくださいますか?咎めは、後ほど甘んじてお受けいたしますので。
* 2022/10/24 (Mon) 03:54 * No.36
(重たげな目蓋に遮られた紫水晶は、蒼のまなじりを見事に綻ばせた。人参が嫌い。その発想自体が可愛らしいのだと告げる代わりに、)今のケヴィンはそうでしょうね。(曖昧な独白の行方や如何に。空世辞の果て、虚々実々の駆け引きに辛酸をなめた若輩者として、貴人の格が高ければ高いほど予想のし甲斐もあるというもの。早速とばかりに「あの伯爵は茄子が嫌いとみました」と出鱈目を披露した。)ケヴィンの百面相は癖になるのですよ。つまるところ、きみが原動力です。(仲間ならではの苦言が微笑みを連れてくる。うたかたの笑声が喧噪に溶けきる前に、ふと口を噤んだ。)……きみが原動力。自分で言うのもなんですが、三文小説に出てきそうな口説き文句ではありませんか?どうです、ケヴィン。ときめきました?(戯れ半分、本気半分の蒼が紫水晶を望む。願わくば、このままずっと夢を見ていたかった。――違えたのはアメリアだ。俯く騎士の自責が手に取るように分かるから、その顔を上げさせたいと強く思うのに、いつだって薄氷は気まぐれだった。無言の声が半分の姫を突き刺す。双子は決して器用ではない。だからこそ役割を明確に分かち、剪定する間もなく齟齬の芽を摘み取る。それがふたりの処世術だった。なぜ。よりにもよって。どれほど悔いたところで、白日にさらされた半分の退路はない。)……そ、うですか。わかりました。(どれだけ未知に焦がれたところで、いざ困難に直面すれば融通など利きやしない。それが箱庭で育てられた半分の現実だった。陰鬱な長休符を拓いたのは、穢れなき紫水晶の刀身。騎士の聡明なまやかしを理解するよりも先に、淡々と采配を振る。)代人はパターソン大公を。すぐに戻ると伝えてください。ケヴィン、きみは件の楽器へ案内を。(分家の長を指名するなり、冒険には不向きのヒールが幔幕の向こうに消える。きらびやかなボールルームから切り取られた薄闇の端で、未成年の主従だけが息をしていた。)はは。せっかくの過分も台無しですね。(逃げるように俯く。何から逃げているのかは分からなかった。傷ひとつない靴先がやけに皮肉めいていたから、それなりに笑えていたと思う。)すみません。きみに嘘をつかせました。(紫水晶の輝きを不必要に汚した気がして、ひどく後ろめたかった。長い息を吐いてから、目を閉じる。情けない。眉間の皺が苦悶を刻む。)……“私”は、何を弾くと?(先の機転を鑑みるに、かの打ち合わせに彼も隣席していたのだろう。せめて妹の知る曲であってほしい。心もとない祈りが落ちた。)
* 2022/10/24 (Mon) 21:56 * No.43
(意味ありげに差し出された言葉の意味を測りかね、ささやかに首を傾げる。しかし重ねての問いを慎んだのは、これ以上深掘りを行えば墓穴まで掘り当ててしまいそうだったからだ。実は幼い頃はあまり得意ではなかったとか、人参だけでなく茄子も同様だとか。流石に知られては沽券に関わる。)ど、どうですと言われましても……たとえときめいたとしても、百面相が理由では喜んでいいのかわかりかねます。(からかわれていると分かっているのに、必要とされている事実には心が動くこの矛盾。努めてむつかしい顔を作ろうとしても、上擦る声では迫力なんてどこにもない。とはいえ、少年がいくら焦らされようと概ね平和に進んでいた憩いのひとときは、宮中晩餐会という魔窟においては貴重な時間であったのだ。不可解そうにしていた使用人たちが末姫の振るう采配を受けて各々の持ち場へと戻ったなら、そこで漸く呼吸することを思い出したかのように息を吐く。「姫、」と短い呼びかけは幔幕をくぐったところで蒼へと追いついただろうか。いまだ消えない翳りを前に、眉尻を下げた瞳が沈痛を語る。)なぜ、謝罪を?僕自身の判断でついた嘘なのですよ?(慣れない謀りは拙いものであったかもしれないが、主君であり友である相手の異変を前に黙ってなどいられなかった。心に掛かることがあるとすれば、後々の口裏合わせが大変そうだとそのぐらいで、嘘に後悔はないのだと静かな調子で告げる。)姫が師事されていた音楽家の曲だと伺いました。題名はたしか……“人形の見る夢”(苦し気な質問。閉じられた蒼の残像をなぞり、過日の記憶を手繰り寄せる。その音楽家が此度の晩餐会で演奏関係の指揮を取っていること。彼との打ち合わせで座興を行うことになってしまったこと。姫君自身はあまり乗り気そうではなかったこと。詳細を求められたなら訥々とそれらを語り、傷ついたように笑う面差しを紫水晶に映した。伏せた瞼を微かに震わせたのは、少年が思っていた以上に、末の姫の苦悩は根深いのだと気づいたから。)――姫、ここから城の裏側のバルコニーまで、誰にも見つからず行ける道などはご存じですか?(だから唐突に、ふとした思いつきのように問うた。彼女が城内の抜け道に詳しいことは短い付き合いであっても薄々察しつつあるので、答えを待たない強引さで片手を差し出したなら、)少しだけ、冒険に出ましょう!こんなところに居ては、息がつまってしまいます。(前言撤回。重責のご褒美は先払い。ふたりで星の海へと漕ぎ出そうと、笑顔で誘った。)
* 2022/10/25 (Tue) 20:24 * No.51
(ちぐはぐな少年の微笑ましさにまどろんでいた蒼は、今や温度を失くしていた。この鬱屈とした暗がりでさえ、紫水晶は清冽な輝きを湛えているのだろう。爪先に落ちた目線はそのままであるから、あくまで憶測に過ぎないけれど。)きっかけを作ったのは私です。(冷ややかな断定は、ともすれば強い否定のように響いたかもしれない。寒色の瞳も、下がりがちな口角も、静謐においては悪目立ちするばかりだ。ひどく喉が渇いていた。声が掠れる。それは険のある顔立ちに似合いのもので、薄闇によく溶けた。)……人形の見る夢。(よりにもよって。からっぽの祈りをすり潰すようにして、米神を擦る。妹がハープでは弾けない曲目だった。何より嫌いだったのだ。かの曲が抱く物語そのものが。騎士から与えられる記憶のかけらは、こまごまとした違和を塗り替えてゆく。久方ぶりに顔を合わせた師が気安く声をかけてきたこと。乳母がうんと時間を費やして爪紅を灯したこと。どれもこれも腑に落ちるものばかりで、いっそ笑えた。)ありがとう。もう大丈夫です。きみのおかげで思い出せました。(拙い謀りとは似ても似つかない、なめらかな偽り。踵を返そうとしたところで、思いがけない疑問符に舌が縺れた。)何を突然、(問いを問いで返す愚行は、差し出された手によって窘められる。戸惑いがちに蒼が揺れた。魔窟で道を違えた迷子は、もうとっくに途方に暮れていたから。誘われるがまま、冷え切った手を重ねる。やはり彼はずるい騎士だった。そう易々と臨めない彼の笑顔がそこにあるなら、手を伸ばす以外の道などない。)きみには敵わないな。……そうですね。ケヴィンの言う通りです。ふたりで星月夜の冒険といきましょう。(冒険。それは湿気た導火線を燃やす魔法の呪文。薄闇の合間を縫い、すすけた細道を進む。今日のために誂えられたドレスの裾が灰を馴染ませたころ、ふたりだけのバルコニーには満天の星がまたたいていた。)……いやはや。醜態ばかりの呆れた夜でも、星はこんなにも綺麗なのですね。(流星群の姿は見えない。それでも、星々がさざめく夜空は美しく、夢のような眺めだった。薄闇で手を重ねてから、頑なにその手を繋ぎたがった主人を、彼はどのように感じたのだろう。願いの行方に関わらず、蒼はようやく紫水晶を見つめた。)私はいいのです。今さら下がるほどの評判もありません。でも、ケヴィンは違います。私が半分を晒せば晒すほど、きみは曰く付きの姫に宛がわれた曰く付きの騎士として見られるでしょう。私は、それが心苦しい。(淡々とした吐露は、星のしずくが滴るように。)
* 2022/10/26 (Wed) 17:52 * No.61
(布一枚隔てただけだというのに喧騒は遠く、反してアルトは薄闇の静寂によく響いて聞こえた。触れがたい断定も同様で、凍てつく温度が胸裏を吹き抜ける。されど恐れおののいて震えることも、傷ついて打ちひしがれることもない。普段は奔放な彼女の自責の強さを目の当たりにして、紫水晶は一抹の寂しさを宿すのみだ。)きっかけなど言い出したらきりがありませんよ。それに姫は貴き御方です。従者の立場を尊重してくださるなら、謝罪はお止めください。(緩く首を振り言い募ってしまうあたり、また正論だと叱られてしまうかもしれない。でも、それでよかった。たとえ反感を買ったとしても、彼女が自分自身を責めるのよりはよほどいい。)お力添えが出来たのならよかったですが……。姫、ほんとうに……(「大丈夫ですか?」問いかけようとして、迷う。あまりにもなめらかな偽りを前に、理由も分からないままの憂慮は無力で、発した声は尻すぼんだまま地に落ちた。やはり打ち合わせ段階で無理にでも止めるべきだった。蚊帳の外からの後悔は浮かび上がる言葉を片端から打ち消して、結局残った手段は空気を変えるだけだったのだから、上手くいかないにもほどがある。)ええ。抜け出すなんて本来ならあってはならないことですが、姫と僕だけの秘密です。……流星群、見れるといいですね。(それでも差し出した掌が取られたなら、嬉し気な笑みを携え冒険へと繰り出そう。瀟洒なドレスを一切考慮せず進む彼女に、ハラハラドキドキの道程だ。やがて星影の下に辿り着く頃には繋がれたままのぬくもりもすっかり馴染む。片手ずつの重なりは小さな子どもが寄り添いあうのにも似ていて、気恥ずかしさより愛しさが勝った。)……以前にも申しましたが、姫がそのように心を砕いてくださるのは身に余る光栄なのです。この身を案じてくれるというだけで、言葉に尽くせないほど嬉しい。(夜天を覆う星々もうつくしいが、漸く向き合えた蒼の輝きには叶わない。零れる端から燃えていく小さな吐露を耳にして、紫水晶は心底の喜びを語る。やっぱり彼女のやさしさは過分だ。)でも、僕はこうも思ってしまうのです。曰く付きになったら僕も半分の騎士と呼ばれるのだろうか。ではその半分の騎士が偉大な何かを成せたなら、姫の悪評をそそぐこともできるのではないか――と。(主従とは一対だ。姫君の言う通り片方の評判が片方を引っ張るなら、己が露を払える騎士になればいい。今はまだ力はない、しかし侮蔑を被る覚悟はあると、少しだけ力を込めた指先から伝わってくれるだろうか。祈るようなまなざしは、星ではなく傍らの蒼だけを見つめている。)
* 2022/10/26 (Wed) 23:39 * No.67
きみは慎ましいようでいて、はっきりと物を言いますよね。友人としては大変喜ばしいことですが、顔合わせのきみとはまるで別人のようです。(強く引き結ばれていた口の端が、僅かに綻ぶ。腫れ物の末子を諫める者はほとんどいない。皆の“アメリア”はそのままのエイミーでいいのよと、アメリアを共有する姉でさえ無条件に肯定してしまうのだ。だからこそ、彼の正論はいつだって新鮮だった。傷心を忘れたひと時の微笑みは、伝え聞いただけの始まりを嘯く。)そうですね、きみと私だけの秘密です。……私はもう、流星を掴んだような気分ですよ。(錯覚しそうになる。彼の言う「姫」が、自分だけを指す単語なのではと。望みたくなる。彼が手を伸ばす先が、自分だけであればいいのにと。甘美な夢に溺れた蒼は、紫の星辰を掴まえて離さなかった。)――…きみは、とても強いのですね。(星影に勝るとも劣らない紫水晶の輝きこそ、嘘吐きの蒼には過分だった。ひたすら真摯に響く言葉たちは、半分の心をゆっくりと、あたたかに満たしてゆく。赤絨毯の上で交わされた美辞麗句など足元にも及ばない。揺るぎないまなざしに射抜かれ、指先から伝わる想いに背を押され。ついに蒼は白状した。)怖かったのです。私は誉れになれないどころか、正しく生まれたきみさえも半分にしてしまう。ケヴィンも、ケヴィンを愛する者たちも、みな不幸にしてしまう。(姉だってそう。妹さえいなければ、彼女は正しくアメリアで在れた。不純物の自負に悲愴はない。ただただ盗人のような罪悪感だけが澱んでいた。そして、それを一方的に押し付けていたのだ。こんなにも勇ましい彼に。)ケヴィン。きみの言葉は魔法のようです。私は今、初めて半分という言葉を好ましく思えました。(半分。それは双子を忌避する王国において、成り損ないを表す侮蔑だ。たった四文字がもたらす屈辱など、彼に強いたくはない。それでも、一対として許してくれるのなら。誹りを甘受するのではなく、希望へと手を引いてくれるのなら。蒼は恋を知らない。しかし、それでも、もしかしたら。叶わないと知りながら夢を見て、永遠を祈りたくなる。こんな気持ちに名を付けるなら。繋いだ手を引き寄せる。ゆるく下方へと引っ張れば、紫水晶は蒼と同じ高さで見えるだろうか。ハラハラドキドキの道程で小傷を刻んだフレンチヒールの爪先は、彼だけを見つめていた。)ありがとう。頼りにしています、ケヴィン。(手を離す。彼の前髪をやわくかき分け、小さく背伸びした。その額へ捧げた感謝の口づけは、流星群の訪れとともに。)
* 2022/10/27 (Thu) 17:58 * No.71
う…っ、あの時は緊張していたのです。それに王室の方にまみえるのは初めての経験だったので、なんだかとても、姫のことが眩く見えて…。(僅かであっても張りつめていた糸が緩む気配に胸を撫でおろしたが、過日の失態については立つ瀬がない。今はもう目を合わせるのに抵抗はないし、なんなら蒼い虹彩をいつまでも眺めていたいぐらいだけれど、それは彼女が友人として親しんでくれたおかげだと思っている。ふたりでひとりの差異など考えもしないまま、いまだ醒めない酔夢は少年の忠誠心をより強固なものとしていた。“半分”の名を背負うことになったとしても、構わないと思うぐらいには。)……いいえ、まだ強くはありません。強くなりたいと、願ってはおりますが。(大言壮語だ綺麗事だと笑われても仕方のない話を肯定され、はにかむように相好を崩しては理想を語る。事実として、今の己が出来ることなど多くない。それでも、ほんの少しでも心を明け渡してくれるというのなら、寄り添って味方であり続けることに迷いはなかった。)姫、お間違えになってはいけません。忌まわしきは双ツ首。神話の中の怪物であって、姫ご自身ではないでしょう?貴方の中にも由緒正しき血は流れているのですから、誰よりも幸せになる権利だって、きっと――…(輪を乱す半分。完全体の成り損ない。人々の間で当たり前のように唱えられる嫌忌の声を前に、自ら罪人の烙印を押す様が苦しくて、いささか熱の入った調子で否定を紡ぐ。しかし合間に飛び込んできたのは怖れを翻す静謐に満ちた言葉。咄嗟に聡明な蒼を見返したところで片手を引かれ、油断だらけの騎士の上体が傾ぐ。なんらかの声を上げる間もなく縮まった身長差の中、紫水晶に映るのはただひとりだけだった。)   (――星が、落ちてくる。蒼穹の高みにあって届かないはずの輝きが、目の前へと降り注ぐ。信じられないことが起こったと言わんばかりに大きく瞬きしたのは一度きり。ほとんど飛び退く勢いで半歩後退った少年は、片手で額を覆い夜目にも分かりやすいほど頬を朱に染めた。釣り上げられた魚のようにひとしきり息を食んで、最終的に声にならない声を上げる様は、なかなか滑稽だったかもしれない。)~~~~っ! ま、魔法を使われたのは姫の方ではないですか!でないと、こんな……こんな……星が!!(自分でも何が言いたいのか判然としない文句を口にして、居たたまれなさに顔を背ける。地上のこもごもとは関係なしに天球から降り注ぐ星々はうつくしく、祝福が授けられるという伝承もあながち迷信ではないように思えた。だから少年は胸の内で祈る。どうかこの光は我が君のためのものであればいい、と。)
* 2022/10/28 (Fri) 21:53 * No.84
(この冒険が彼と妹だけの秘密であるように、眩い過日は彼と姉だけのものだ。決して交わらないはずの記憶。歪な円環。それを正円と信じて疑わない紫水晶の純度を知るほどに、そら恐ろしくなる。清く正しい騎士の在り様を希求する彼は、偽り、欺き、誑かすことでしか生きられない妹の真実を知ったとき、どんな目で蒼を映すのだろう。)強いですよ。少なくとも、私よりは。(せめて覚えていよう。大切な友人の微笑みを。明朗な肯定に自嘲はない。優しい熱が罪人を灼いてようやく、すこしだけ困ったように微笑んだだけだ。こんなにも思いやりに溢れた少年を騙してまで生きる価値など、きっと何処にもないというのに。それでも、妹は生を捨てられない。想像よりもずっと容易く傾いだ上体も、一度きりの大きな瞬きも、赤らんだ頬も。募りに募った愛しさは、明るい笑声となって響き渡った。)あはは!やはりケヴィンは百面相ですね。きみがそうやってかわいいから、私は戯れが止められないのですよ。なんです、星がどうしたというのです?驚きのあまり、幻でも……(涙さえ浮かびそうな笑みが、箒星の群れに圧倒される。幾千の星々が描く軌跡の先、紫水晶が背いてしまったことの方が問題であったから、わざとらしく少年を覗き込んだ。)どうです、ケヴィン。ときめきましたか?(赤ぶち眼鏡の奥で、戯れの蒼が笑った。つるぎのように正しく美しい彼に、ありったけの祝福が訪れますように。――冒険の残り香をそのままに、赤絨毯へと舞い戻った半分の姫。使用人へ「気が変わりました。フルートを用意してください」とあっけからんに告げて、どよめく賓客らに恭しく頭を垂れる。生憎と愛想笑いは不得手であるから、由緒正しき血が流れている者として、口上だけは毅然と述べておこう。ひとりきりの舞台でも、源氏幕にはきっと、半分の騎士がいてくれる。)不治の病に冒された少女を慰めるため、少女そっくりに作られた人形・コッペリア。ふれあいの中で心を宿し、少女の病を引き受け砂塵に帰したコッペリアは、どんな夢を見たのでしょうか。……本日こうして宴を開けますのも、王国の守護者たる皆々様のお力添えあってのこと。アメリア・キュクロスより、心よりの感謝を込めて。(かくして響いたフルートの音色は、冴え冴えとした夜気によく通る。美しい献身を描いたこの曲が心の底から苦手だった。それでも、流星の秘密を締め括る旋律になるのなら、心を尽くして奏でよう。コッペリアは夢を見る。果てないアメシストの酔夢を。)
* 2022/10/29 (Sat) 23:45 * No.97
そうでしょうか…?(からりと明るい断定に自虐の色はなかったけれど、比較を交えた結びにそのまま頷いていいものか迷う。今宵のような理不尽が末の姫には生まれてこの方付きまとっていて、それでもこうして他者を思いやり認められる慈悲深さがあるのなら、彼女は十二分に強いのではないだろうか。それに一口に強さと言っても方向性は様々で、一概に比べられるものでもないと思う。ふたつの真円を描く眼鏡越しに蒼の様子を窺い、少しの間思案した少年は、姫君から度々向けられる悪戯な笑みを真似るように、ふっと軽やかな呼気を零して薄く口角を持ち上げて見せた。)でも、それならいずれ、姫の戯れにも太刀打ちできるようになるかもしれませんね。その日まで精進あるのみと、ひとつ大きな目標ができました。(意図して生意気な調子で叩いた軽口は、彼女の中にどのように響いたのだろうか。僅かでも負けたくないと思わせたなら御の字だが、実際のところそんな日は未来永劫訪れる気がしない。だって笑顔ひとつ、口づけひとつでこんなにも簡単に狼狽えてしまうのだから。ぴかぴか輝く一等星みたいな笑い声が宵の天幕に響き渡るのを恨みがましく思いながら、背けた顔を覗き込まれたならしぶしぶと蒼を見返す。吸い込まれそうな透明度は落ちていくことも飛び立つことも出来る色だから、こんなにも魅入られてしまうのかもしれない。でも、ありのままの想いはやっぱり口外など出来ないから。なけなしの虚勢を張る紫水晶は、うるさい鼓動をひた隠しにしたまま声高に主張するのだ。)……、……姫にだけは絶対に教えませんっ。(かくて再び饗宴の幕は上がる。たった一人でも毅然と舞台に立つ姫君はその場の誰よりも輝いていて、いったい彼女のどこが欠けた存在なのかと訝しむばかりだ。うつくしい献身を物語る口上はやがて高く細いフルートの音色と溶け合い、人々の喧騒を等しく夜の静寂へと沈めてゆくのだろう。座興が終わった後は惜しみない拍手を送り、素晴らしい演奏だったと興奮気味に褒め称えた少年は、その晩不思議な夢を見た。そこには金髪碧眼の少女と人形が現れて、うりふたつの二人は病など忘れたようにはしゃぎながら騎士を伴い冒険へと繰り出す。灼熱の砂漠、広大な海原、虹のかかる丘を越えて。辿り着いた星降る夜に繋いだ手の先にいたのは、いったい誰だったのだろう。――それは真実を暴けばうたかたに消え去るコッペリアの幻。脆く儚く、けれど感傷の余韻だけが心を捉えて離さない、そんな幸せな夢だった。)
* 2022/11/2 (Wed) 15:55 * No.104